昨日の最高裁判決(DNA鑑定でも父子関係覆らず)に思うこと。

昨日出た例の最高裁判決。
法律上の父とされている男性との関係でDNA鑑定をもとに父子関係が争われていた2つの事件について、「DNA鑑定によって別な男性が血縁上の父であることが明らかとなっても、「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」などなどと定めている民法772条の推定は覆らないなどと判断されました。

昨日、どのニュースでも結構大きく報道されていたので、目にした方も多いと思います。
現在のDNA鑑定は民間会社の比較的低価格のものでもかなり精度が高いようですし、裁判所で実施する場合には、価格は2~3万円、サンプル採取も裁判所で行うわけで結果に対する信頼度はゆるぎないはず。

今回の2組の事件、私的に民間会社を使ったのか、裁判所で実施したのかはわかりませんが、いずれにせよ「99.9%違います」なんて結果が出たら、さすがに夫の子という推定(我々の世界では「嫡出推定」と言いますが)覆るだろう…そう思われていた同業のみなさん、多かったのではないかと思います。

実際、私、ヤフートピックスで速報見た時に「うっそー」と事務所で声をあげてしまうくらい驚きましたから…

ちょっと専門的な話になりますが、民法772条はあくまで「推定」する規定なわけで、「夫の子」でないことが立証(同業者向けにいうと「本証」が必要ですが。修習生時代に民裁起案が苦手だったとは思えないこの書きぶり!!)されれば、推定は覆ることになるはずです。

で、DNA鑑定で上記のような結果が出た場合、自然な感覚として「夫の子ではないと立証(本証)された」といえそうなので、そうであれば、推定覆していいんじゃない?覆すべきでは?と考えられるのですが、最高裁は、「覆りません!!」と判断したと。

最高裁の判断は、DNA鑑定でも本証に足らないとのことだったのか、それとも、「立法趣旨などに鑑みて」とかなんとかいって、うまいこと立証レベルの話を迂回して覆らないということにしたのか、詳細は判決文を見ないとわかりません(早く見たい。ついでに言うと調査官解説も読みたいです)。

ただ、いずれにせよ、この判断、772条の推定規定を事実上、反対事実の立証を許さない「みなし規定」(つまり、何があっても、妻が婚姻中に懐胎した子供
の法律上の父は夫とみなします、という趣旨の規定)に押し上げてしまったのではないか、解釈の枠を超えた立法に近い解決をしてしまったんじゃないのか、最高裁、なんて思ってしまうのです、個人的には。

なんで、こんな強烈な判決を出しちゃったんでしょ?最高裁。
あの保守的で、右ならえで、必要な判断を下さないというイメージが強い最高裁。

これもまた勝手な個人的憶測なのですが、現在、日本でも生殖医療技術に関する法制化が進んでいることが要因の1つなのかなあ…なんて考えてしまいました。
すごい漠然としたカンなんですけど…

まさかとは思いますが、例えば、夫の方の事情で子供ができない夫婦において、妻が婚姻中に他の男性の精子と自身の卵子を受精させて着床、懐胎、出産…ということになった場合、今回のこの判決前提にして、「夫の子と推定します」なんてことにできるようにしたかった…なんてわけじゃないよねえ。

普通に考えれば、精子提供した男性が法律上の父→その後、妻の夫と子の間で養子縁組みたいなルートが自然なんじゃないかと思うんですが、どうも、今回の法整備では、子に自分の「出自」を知る権利を与えるか与えないかが議論になっているようでもあり(与えないという方が優勢らしいと聞いていますが)、そうすると、772条の推定がうまいこと使えれば、ノープロブレムということにもなりかねず…

いやいや。こんなことは私の病気レベルの?妄想であって、単に最高裁が、いろんな思惑や利害や感情が渦巻く男女関係に巻き込まれて、子の身分関係が安定しないのを危惧して、「つべこべ言うな、はい、この基準で考えてね」と一刀両断にしただけの判決…というなら、それでいいんですけど、今回の2つの事例見る限り、この判決で「子の福祉」とやらが守られたとはどうしても思えないのです。

なんだか、気持ち悪い、最高裁判決。
意図を感じずにはいられないのです…
想像力豊かすぎ&法律に弱いテラバヤシとしては。

<追記>

この投稿の後、最高裁にアップされていた判決文と補充意見、反対意見をすべて読みました。
今回の判決は、非常に保守的かつ形式的の法文を解釈したもので、そういう意味で先に書いたようなものとは違うのですが、かなり画一的に法律上の父子関係を判断しようとするものである点では、やはり、現代の状況や今回問題となった事例(そして、今般よくありそうな事例)の解決には全く役に立たないものでした。
立法で解決しなければならない問題というのが多数意見を出した裁判官の立場のようですが、果たしてそうだったのかという疑問が残りました。
今の民法のもとでも十分に現代を反映した判決が書けたはずです!!



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by terarinterarin | 2014-07-18 14:21 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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