若手独立弁護士のみなさん、甘い言葉にご用心。

真冬のように寒い日も過ぎて、ようやく春らしい暖かな日が戻ってきました。
ともえ法律事務所も、そろそろ開所半年を迎えようとしています。
波はあれど、ここ最近は、それなりの件数の依頼をいただくようになり、少しずつ少しずつ軌道に乗り始めているかもしれない、と思っている今日この頃です。

独立してから、非常に多いのが「広告宣伝」の営業電話。
その何割かは、ホームページ対策、SEO対策をうたった営業電話です。

昨今の都市部の弁護士は、以前と違って、顧問先や顧客を持たずに独立するケースが増えているのでしょう。「いちげんさん」的な依頼を拾うことが、生き延びていくために非常に重要になっています。
弁護士を探している側も、インターネットを検索することが当たり前の時代になっています。
そこで、見栄えのいいホームページ、SEO対策が重要→プロの私たちがやって差し上げましょう…という商売が、我々の業界、中でも「有力な稼ぎどころなくして独立したであろう若手?弁護士」を食い物にしようと、もとい、そこから業績を上げようと、営業を積極的にかけている…ようです。

が、半年やってみての感想。
「SEO対策」「ホームページ対策」
必要ありません。
ま、正確にいうと、検索で上位にくる必要はない、体裁だけを整えるホームページはいらない、ということです。

なぜか。
弁護士に本当に真剣に相談しようとしている人は、検索に検索を繰り返すからです。
気になる弁護士を見つけたら、その人がどんな弁護士なのか知ろうとするからです。
検索して一番上に名前が表示された弁護士や事務所を選ぶ人、きれいに体裁を整えたホームページを見ただけでそこに電話する人は、あなたを必要としているわけではありません。

確かに、一見間口は広がるかもしれません。しかし、広げた間口に意味はありません。
チョイスされても、大切に思ってもらうことはできないでしょう。
相談の前に平気でキャンセル。連絡があればまだしも、連絡もしないでキャンセル。
事案の内容も説明せずに、「いくらで受けてくれますか」。
相談内容を順を追って聞こうとしても、自分の言いたいことしか言わない。
自分の希望しか言わない。
そんな相談者がたくさんたくさん押し寄せる結果になります。

このような事態は、法律相談を無料化すれば、さらに高まります。
「ただでいいや」と思う人の中には、「こういう人にやってほしい」というこだわりはありません。
無料相談では、相談をする側のモラルの悪さが指摘されています。
が、相談を受ける側のモラルも低いことが少なくありません。

SEO対策をして、ホームページ対策をして、法律相談を無料にして間口を広げるにいいだけ広げた結果、「あなたでなくてもいい人」ばかりを呼んでしまって、「あなたでなくてはダメな人」を遠ざける結果になっているかもしれないのです。

こういう時代だからこそ、依頼につながる相談を自分のところに引き寄せることが大切です。
「自分ができること」を正しく発信し、「そんなあなたにお願いしたい」と言ってくれる人に来てもらう。そういうことを考えるべきなのです。
そのためには、お金をかける必要は必ずしもありません。

何かを「ニッチ」的に行っている弁護士は、そのニッチな人々や団体から事件が来るでしょうから、ほんとに別にネット対策なんて何にもしなくていいかもしれません。
しかし、テラバヤシのように「女のマチ弁」的な生き方を選んでしまった場合には(本当にそんな生き方を選んでしまったのだろうか、と書いてから疑問に思うダメな弁護士)、何も発信しないというのは、生き地獄を味わう結果となりえます。
なにがしか「自分はここにいる」という発信をすることは必要と思われます。

では、何を発信するのか。
簡単です。
自分が何者なのか、を発信すればいいのです。

どういう思いで弁護士になったのか。
どういう思いで開業したのか。
どういう姿勢で弁護士稼業をやっているのか。
どんな事件を経験してきたのか。

得意分野はこれこれです、こういう事件を主にやっています、みたいな断片的な情報には、断片的な意味しかありません。「あなた」という人物がどういう人物なのか想像を掻き立ててもらうことは、できないでしょう。
逆にいうと、今の時代、こういうことが発信できない人間は、独立なんぞしないほうがいい、ということになるのではないでしょうか。

開業して半年、国選や他人の紹介以外のルートで、ともえ法律事務所、弁護士テラバヤシにたどりついた方の半数くらいは、弁護士ドットコムに掲載されている私の情報や自己紹介文、ともえ法律事務所のホームページやこのブログを読んでくれていました。そのうえで、「ほう。いっちょテラバヤシっちゅう弁護士に相談してみるか」とやってきれくれた方が多かった。
そういう方との間で行った相談は、ゆったりとした時間の中で、ゆっくりと話を伺い、慌てずに回答を差し上げる、「言葉のキャッチボール」ができるいい相談が多かった。そう感じています。

一時、仕事上のお付き合いで無料電話相談サイトに登録していたことがありますが、お値段の話しかしない人、必要な情報を話してくれない人、そんな方が多かったという記憶です。もはや相談とは言えませんでした。無断キャンセルされた数件も、すべてこの無料相談サイトからの件でした。
ともえ法律事務所では、相場よりはお安いものの、法律相談料をいただいています。良い相談が多かったのは、この法律相談料に負うところも大きかったと思っています。法律相談料には、払う方にももらう方にも、相談に対する真剣さを生む力があると自信をもって言うことができます。

もちろん、無料相談の枠を用意することは必要です。しかし、それは、貧困にあえいでいる方を救済するためにあるべきです。
やみくもな無料化は、法律相談の質を低下させる危険を伴います(私だって、貧乏で貧乏でどうしようもない人、生活保護受給者などからお金をもぎ取るつもりはありません。そんなつもりがあるなら、扶助相談弁護士に登録なんてしません)。
集客のための手段にするのは間違いです。

きれいごとといわれるかもしれません。
そんなことやってたら、いつかカツカツになるといわれるかもしれません。

しかし、そんなこと言う前に、一度試してみてはどうでしょう、半年くらい。
ホームページ対策なんていつでもできます。
SEO対策なんていつでもできます。
やってる人は、一度やめてみることをおすすめします。

でもね。
それでカツカツになることがあるんだとしたら、それは、あなたに弁護士としてチョイスしてもらえる力がないということなのかもしれません。「あなたがいい」と言ってもらえるものが、あなたにないだけなのかもしれません。
テラバヤシが生き地獄を味わうことになっても、同じこと。SEOをやらなかったせいでも、ホームページ対策をしなかったせいでもないのです。
テラバヤシに弁護士としての魅力を感じてくれる人がいない、それだけのことなのです。

法曹人口をむやみやたらと増大させた司法制度改革の是非を論じたって仕方ない。そんなことを言うつもりはありません。
しかし、私たち弁護士(特に若い弁護士)が競争にさらされていることは事実です。
その競争の中で、どう生き抜いていくべきなのか。
世間で言われていること。
こうしたら生き残れますよ、という甘い誘惑。
惑わされないことが、第一歩だと、自信をもってそういえます。














[PR]
Commented by 櫻井光政 at 2015-04-17 11:17 x
テラバヤシらしくて小気味いいな。頑張れ!
Commented by terarinterarin at 2015-04-17 13:07
櫻井先生

へそ曲り全開にしてみました。
ありがとうございます!
Commented by ミドリムシ at 2017-07-23 11:08 x
広告勧誘はともかく、弁護士が以前の倍近くに急増したのに、弁護士会費が据え置き、高いままであることはおかしいと思います。
会費収入が倍になったのですから半額と言わないまでも大幅に減額されて当然です。一人では無理でも多くの若手弁護士の力でそういった運動を起こすべきです。医師会はかなり前から入会の強制はなくなりました。弁護士の入会強制は医師会と同列には論じられませんが、強制であるからこそ、会費を下げて当然だと思いますよ。
by terarinterarin | 2015-04-16 21:47 | Comments(3)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terarinterarin