バカにしていませんか、新興の大型法律事務所。

今回は、同業者向けとも一般の方向けともつかぬ投稿です。

「新興の大型法律事務所」というのは、いわゆる4大(最近は5大なのかな?縁がなさ過ぎて、もうよくわかりません。)ローファームや各地域で長い間かけて徐々に大きくなってきたある程度規模の大きい法律事務所でもなく、ここ10年くらいの債務整理ブームに乗って設立され、かつ急速に拡大してきた弁護士法人のことです。
少なくとも数十名の弁護士を雇用し、その中のいくつかは、全国あるいはいくつかの地域に支店を持っている、そんな事務所もあります。

ここまで書けば、同業者あるいは司法修習生なんかだと、特定の事務所がいくつか思い浮かぶんじゃないかと思います。
そう、あなたが思い浮かべているそれは、たぶんハズレではありません。

こういう事務所とか、こういう事務所に属する弁護士というのは、中堅も含めた古い弁護士からは、ある意味、偏見の目で、というか「斜めの視線で」見られることが多かった、いや、今でも多いのではないか、と思います。

それというのも、こういう「新興の大型法律事務所」の走りとなっていたいくつかの事務所では、債務整理事件に際して、弁護士に会うのは初回相談時の5分くらいで、その後は事務員としか話ができない、費用の積み立てを1回でも怠ればすぐに辞任、弁護士に会いたいと担当事務員に訴えたら途端に辞任、なんて話が、同業者間で次々流布され、「ベルトコンベアー式の機械的事件処理」しかしないというイメージがすっかり定着していましたから。
実際、テラバヤシも法テラス時代は、こういう事務所の弁護士が途中辞任してしまった事件を引き継いで、破産申立や過払請求などしたことが何回かあります。
弁護士の立場からすると、「前の先生が辞任した件」というのは依頼者・相談者のお人柄になにがしか問題があるのではないかと警戒することも少なくないのですが、私が受けたこのような件では、個人的な印象では、さして依頼者の方のお人柄が難しかったということはありませんでした。

さらにいえば、こういう事務所がやる債務整理の中には、申立時の債権調査などが「雑」「ざる」「財産隠しが疑われるケース」も相当程度見受けられたのでしょう。東京地裁では、ある特定の事務所の自己破産申立については、全件が管財事件として取り扱われているという話も聞こえてきたものでした。

他にも料金がトータルでとんでもなくお高くなるとある事務所のお噂も、何度か耳にしたことがあります。

おそらく、このような顧客対応や事件処理の悪さ、高すぎる費用というものが一般的なイメージとなり、同業者間での「新興大型法律事務所」に対する偏見めいたものにつながっているのかな、と思います。

確かにね、ごくたまに何かのタイミングでそういう新興大型法律事務所のホームページなんかを見ることがあって、費用なんかを眺めてみると、「うひょ。いい金とってますねえ」と思うことはあります。
が、自分がお手合わせしたり、友人がお手合わせした件の話を聞いたりする限りでは、事件処理とか依頼者対応(こちらはある程度想像になってしまうが)という点で見ると、きちんときれいにされている、という印象です(ただ、こういう中に私が引き継ぐ前の債務整理を担当していた事務所はなぜか含まれていない…)。
書面は読みやすいですし、示談交渉でむやみやたらと敵対心をあらわにすることもないし(注:もちろん依頼者の意向で一切の歩み寄りができないことはあります)、心的に余計なストレスをもたらされることは、あまりこれまでなかったように思います。

テラバヤシは、東京弁護士会や他の弁護士会で、裁判員裁判をはじめとする刑事事件の研修で講師をすることが年に何回かあります。
そういう研修にも非常に積極的に参加しています。
研修後に、この手の大型事務所の新人さんから事件相談を受けた時にも、国選の小さな事件だというのに、随分一生懸命やっているなあと感心しました。

事件処理の点なんかでいうと、むしろ、年長のベテラン弁護士の方が、やたら敵対心をあらわにしてきたり、当事者の主張を何のお化粧もせずにまんま書いているような準備書面を何通も出してきたり、「この事件でそれありか?」というようなアンビリーバブルな示談提案を「これが解決のために合理的」というスタンスでしてくることが多い印象です。
確かに、顧客満足ということを考えれば致し方ない面もあろうかとは思います。
が、一応「法」曹と呼ばれる私たちのこの仕事、法曹である前に社会人としてどうよという対応されるとか、法的な合理性・必要性が見受けられない書面を当然のように提出されたり、送られたりすると、その時の状況次第では、申し訳ないけど、「こんなんで何十年も弁護士やってこれたんだ~」なんて思ってしまったりします(注:自分のことは棚に上げます)。

新人研修なんかでも、「仕方ないから受けている」オーラを出しまくっているのは、むしろ新興大型事務所以外の弁護士の方に多かったりします。研修が終わると、飛び出すように会議室を出ていく姿を見ていると、ああ、この人にとっては「義務」研修でしかないんだなあ(どうして義務になっているのか考えてほしい)とか、事務所のボスがうるさいんだろうなあとか、考えてしまいます。

新興大型事務所さんの内部がどうなっているのかは知りません(ノルマとか結構厳しくて死にそうになっている弁護士も少なくないのかもしらん)。
依頼者・相談者とのトラブルがどれくらいあるのかも知りません。

が、少なくとも、こういう新興大型事務所の先生方、それなりに優秀な層が雇用され、内部である程度きっちり教育?されていることは間違いない。
だからこそ、「外れのない」対応が、みなさんできていらっしゃるのではないかと思うのです。

こんなこと言っちゃうと身も蓋もないかもしれませんが、弁護士にとって、大抵の事件は、「大当たり」の対応をする必要はなくて、むしろ「大外れ」の対応にならないためにはどうすればいいかを考える局面の方が、圧倒的に多いように思うのです。
そのラインを間違わず、かつ、たまに出くわす「難しい事件」(依頼者が難しい、相手方が難しい、理論的に難しいなどなど)については、事務所内に人員がある程度豊富にいるので、相談して対応していけば、こっちも大きなトラブルに発展する危険性は低くしていくことができる。
「外れのない対応」を全ての弁護士が継続して続けていくことによって、事務所のブランド力を高めていくことができるんだろうな、とそんな風に思うのです。

むしろ、誰からも批判や指示を受けない「お山の大将」化したベテラン弁護士の方が、アタリもハズレもわからなくなっていて、とんでも書面を出したり、意味の分かんない対応をしてくることが多いのでしょう。
そして、こういう弁護士に限って、新人や若手の教育なんて考えていない、自分の手足、雑用係になればいいとしか考えていない。
とんでも弁護士がとんでも弁護士を拡大再生産してしまう、そういうカオスになっていくんだろうなと、思うわけです。

そう考えると、何回か前に書いたけど、つくづく最初に入る事務所って、すごく大事だなと思います。
「お山の大将」弁護士のところに入っちゃうと、一番大切な時期にまともな感覚が身につかない。

そして、たとえ最初に入った事務所がまともなところだったとしても、おひとりさまになった後は、後天的にお山の大将になる可能性が増していくでしょう。
なんせ、お客の方しか見なくなっちゃいがちですから。
対個人の依頼者だと、ワタシ、弁護士「先生」になっちゃいますから。

そつのない対応はそれだけでしかないという人もいるかもしれません。
でも、「そつのない対応」が持続してできることは、この世界、かなりな強みであることもおそらく間違いない。
「○○法律事務所の先生だってさ」と鼻の孔広げて揶揄する前に、「そういう自分の事件処理や依頼者対応は大丈夫なんか」と立ち止まることって、つくづく忘れちゃならないよなあと改めて自戒する、体育の日の日没前なのでした。










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by terarinterarin | 2015-10-12 16:48 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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