あまりにトホホだった「祝 脱独身」。

先日、フジテレビの「とくダネ!」という番組で、司会を務める菊川怜さんが結婚を発表した折、「祝 脱独身」とか書かれた垂れ幕だかなんだかが番組内で登場したという話がありました。

私は、「とくダネ!」のテイストが合わないのでこの番組はここ数年全く見ておらず、この日も当然見ていませんでした。この騒動?の顛末は、インターネットで知ることとなりました。

どうやら、この垂れ幕だかなんだかが登場した時の雰囲気は、齢39歳まで独身だった菊川さんを茶化すというものではなく、結婚願望が(比較的?)強いらしかった菊川さんが良いお相手とゴールインできたことを祝う和やかなものだったらしいとのこと。

しかし、いくら雰囲気が悪くなかったとしても、この言葉をテレビに映してしまって大丈夫だろうという感覚というか、あるいは、さして事前に問題にもならなかったその感じが、恐ろしく痛々しいと思わずにはいられません。

クリエイティブサーベイという会社と株式会社BSジャパンが昨年3月に行った調査によれば、20代から40代の独身男女各200名のうち、自分が独身であることに危機感が「全くない」」「あまりない」と回答したのは、男性が65パーセント、女性が54%に上っているとのこと。結婚願望がないと回答したのは、男性が40パーセント、女性が22パーセントとなっているとのことです。

2015年の国勢調査によれば、25歳から29歳の男性の独身率は72.7パーセント、女性は61.3パーセント、35歳から39歳では男性が35パーセント、女性が23.9パーセントとなっていて、前回調査と比較するとポイントが下がっているのは、このカテゴリーの中では、35歳から39歳の男性の未婚率のみで、あとはポイントが僅かながら上がっているという結果が出ています。

テラバヤシ自身も中年真っ只中ながら独身ではありますが、周りを見ていると、決して自分が「超少数派」ということはありません。
同業者かそうでないかにかかわらず、同年代の友人知人に占める独身者の数は、まあ結構なもののように見受けられます(平均から見ればかなり多いことは事実ですが)。

そして、その多くは「結婚したくてもできない」という人たちではなく、将来的に絶対に結婚しないと断言まではしないけれども、独身でいることを特に肯定も否定もせず、現状をそれなりに楽しんでいるのです(テラバヤシもそうです)。

もちろん、高齢独身者の中には、「自分は結婚はしない」と決めている人もいるでしょう。しかし、そう決めた理由については、結婚制度というもの自体がおかしいという堅いポリシーをお持ちの人もいれば、自身のキャラクターが結婚向きでないと考えている人もいることは想像に難くありません。

そして、私なんかよりもはるかに年長の世代の人の意識も「結婚絶対主義」とは言えません。
帰省の折に偶然出会った小学校の同級生のお母さんに「結婚は?」と聞かれたので「していません」と答えたところ、「しないで済むなら結婚なんてしなくていいわよ」と思い切り言われました。
近所のおばさんにも「別にねえ、しなきゃいけないもんじゃないんだから、好きにやればいいのよ」なんて言われます。

つまり、「結婚」というものに対する日本人の向き合い方は、おそらくは老若男女問わず少なくともここ数年多様化しており、「人間は一定の年齢になったら結婚するのが当然」、「女はどんな地位にいようと最終的には結婚して子供を産むのが幸せ」なんて固く固く考えている人の方が、むしろ少数派かもしれないとすら思えてしまうご時世だったりするわけです。

そんな中飛び出した、今回の「祝 脱独身」。
インターネットで顛末を知った時、言いようもない脱力感に襲われました。

記事に書かれていた番組スタッフの「アットホーム」な雰囲気が原因というものが本当なのだとしても、この世論の動向を読まない、読めない、見えないこの感覚って、メディアとして致命的なんではないか。
しかも、この番組は老舗の情報番組、世の中の今を伝えるはずの番組なのです。
にして、この残念な感じ。

思えば、今の政権は憲法改正を目論むにあたり、「家族」を重んじる傾向を持ち出して、「家族を作るか作らないか」という価値観すらじわりじわりと封じ込めて行きたさそうな雰囲気を醸し出しています。

仮に、今回の「祝 脱独身」騒動が、そういう政権動向に乗っかって、「脱独身ブーム」が到来すると読んだ上でのものだったのだとしたら、世論の動向の読み違いにもほどがあるとしか言いようがないように思えますし。

確かに、離婚や家事事件の仕事をしていると、都会のど真ん中で夫婦共稼ぎで、妻も夫も結構な収入を得て暮らしている夫婦なんかでも、夫の方の根本的に恐ろしく保守的で、妻を「どこそこ家の嫁になったのに」、「自分は長男で本家を継ぐので、子を産めない今の妻とは別れて、後継を生んでくれる女性と結婚したい」なんて言い出す始末の男性にお会いすることもあります。
女性の側から「夫の母が、あんたは嫁に過ぎないんだから、出て行くなら子供をおいて出ていけとか言われた」とかいう話も聞いたりします。

しかし、さっきも書いた通り、全く別な価値観を持つ人が多数いることも事実です。

まさかとは思うけど、これが日本の夫婦や家族の常識なんていう雰囲気が、テレビ業界全体にそこはかとなく蔓延しているんだとしたら、もう日本のテレビなんて信用するに値しないな、なんて思ってしまうのでありました。

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Commented by 先入観が読解を阻んだ at 2017-05-03 06:27 x
なるほど、「祝 脱独身」でなく「祝結婚」などとすべきかもしれません。そして独身を切望されている方には「祝独身」にちがいない!(しばらく考えさせられ、今やっと観念到達。やったぁ、ブラボー!)
Commented by terarinterarin at 2017-05-03 08:38
> 先入観が読解を阻んださん
ホントに、なんで普通にやらなかったのかなあ、と思いますね。
by terarinterarin | 2017-05-01 18:23 | Comments(2)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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