法テラスの報酬問題に関するひとつのアイデア。

テラバヤシは、法テラス東京で民事法律扶助の「審査担当」というものをしています。
これは、援助開始決定や中間報酬決定、終結決定に対する決済をする仕事で、東京の場合、審査担当の名簿に載ると、上半期、下半期にそれぞれ1回から2回回ってきます。
報酬が安くて不人気な仕事と言われています…

先日も審査担当の仕事があり、法テラス東京に出向きました。その日は、書類審査のみで、面談審査はありませんでした。
終結決定の書類を確認していく中で、1件、「確かに規程通りに考えると報酬はこうなるんだろうが、それはかなりこの弁護士には気の毒だ」と思われる件がありました。どうしても署名捺印することができませんでした。
担当の職員に、記録上表れていない活動がかなり大変だったはずなので、そのあたりの事情をもう少し聴取するなりして検討してほしいと伝えました。

法テラスの「弁護士報酬問題」というと、国選弁護費用の問題が取りざたされがちです(なんで、この活動が報酬算定上評価されて、この活動が評価されないのだというもの)。この点に関しては、刑裁サイ太さんをはじめとして、相当数の弁護士がSNSを中心に情報発信しています。

国選弁護の費用に隠れがちですが、民事法律扶助の弁護士費用についても、弁護士の活動が評価されにくいという問題があります。
ただ、民事法律扶助に関しては、国選弁護に比べてそこまで判断基準が固いわけではなく、決定案が回されてくる段階で受任弁護士が文句をつける、もとい、意見を述べればそれが反映されることもありますし、終結決定の段階でも、活動内容次第で、報酬が加算されたり、本来の基準で言えば費用の一部返還が必要なケースでも返還させないなど、柔軟な取り扱いがなされているように見受けられます。

先日の審査担当の際に感じたのは、せっかく審査担当に弁護士が入っているのだから、特に終結決定については、受任弁護士の報告書の中から、資料に浮かび上がってこない「見えない頑張り、苦労」は、どんどん伝えるべきだろう、そういう地道な活動が、最終的に報酬アップや報酬基準の改善につながっていくのだろうということでした。

そして、ふと、国選弁護の終結後の費用算定にも民事法律扶助と同様の審査担当を導入する、というのはどうなんだろうと思いました。

刑事弁護の場合、一般的に「刑事弁護人としてすべき活動」「熱心な活動のあかしとしての活動」は結構クリアであると考えられていて、それが、国選弁護の報酬基準に相当程度反映されています。
例えば、捜査弁護であれば、接見の回数、準抗告が通ったかどうか、不起訴意見書を書いたかどうか、示談したかどうかなど。
起訴後であれば、公判前整理手続中の打ち合わせ等の期日の回数、公判期日の回数、保釈請求が通ったかどうか、などなど。
こういう「熱心活動」を示すであろう事象を事細かに基準化して、これをほぼほぼ形式的に当てはめて報酬を決める方式を法テラスが採用した結果、「なんでこれが評価されてこれが評価されへんねん!!」という不条理を生み出す結果となってしまっているわけです。

この傾向は、各地方事務所から本部の?特定部署で国選の報酬算定を一括管理するようになり、余計顕著になったのではないかと個人的には感じています。

実は先日、保釈申請した件で、保釈決定は出そうだったのですが、保釈保証金額がとんでもなく高額で、到底親御さんも払えず、保釈支援協会からも支援見合わせされてしまい、「諸般の事情」を検討した結果、保釈の取り下げをしたという件がありました。
後に、これって、たとえ釈放されなくても決定をもらっておけば、加算の対象になったんだろうか、などと考えました(実は、保釈請求できない案件ばかりが数年続いたので、そのあたりの加算事由に無頓着になってしまっていました)。
もしそうなんだとしたら、その事案独自の事情とか考えずに報酬加算のためだけに保釈決定もらうとかする人いるんだろうな…と、ちょっと嫌な気持ちになりました。

また、私は、刑事弁護の神様、某K山先生から、かつて「意見書書いたり検事に電話したりするくらいなら、アポなしで会いに行け!!」と、不起訴意見書なんぞより「アポなしでPと直談判」の方が効果があるという教えを得たことがありました(実際、これはその通りだと思います。アポなし直談判事例は、私の記憶では、例外なく不起訴になっています。もちろん、不起訴は120パーセントないという事案では直談判に行っていませんが)。

不起訴意見書は、こちらが証拠も何も見ていない状況で、概ね被告人の供述のみを元にして作成するものなので、却って作成するのが危険、ということも少なくありません。
しかし、やはり、事案独自の事情を考慮せずに「報酬加算のため」に作成することを促す危険性もありますし、それはそれで置いておくにしても、「不起訴意見書」は報酬算定上評価して「検察官と直談判」が評価されないというのは、やはり不合理に思えるのです。

国選の場合、水増し請求問題があったために、客観的に資料が残らない活動については法テラスサイドがかなり神経質になって除外しているのではないかとも思えます。
また、以前物議をかもした(失笑)「法テラスについて書かせてもらうよ」中に記載した「謄写費用の見積もりを事前に出せ」と言われた問題からも垣間見えるように、「犯罪を犯したけしからん奴の活動のために国費をあまり使いたくない」という本音もチラチラ見えるような気がする(いや、被害妄想かもしれませんが)のであります。

基準の見直しをせよと働きかける活動が重要であることはもちろんとして、「基準の運用」に柔軟性を持たせられるようなシステムの導入を促すことも必要ではないかなと思います。
そこで、テラバヤシは、民事法律扶助の「審査担当」システムを参考にして、法テラスサイドでいったん出した報酬決定案を(刑事弁護に精通した)弁護士がチェックして、「基準に該当するとみなしてよい活動の有無」や逆に「基準に該当しているようだけど、そこまで加算しなくてよい活動の有無」(近距離の警察署で5分の接見を毎日行う、とかは対象になりえそう)、「不当請求ではないか」というものを、弁護士独自の目線であぶりだせるようにするシステムの導入を提案したいのであります。

が、こういう手法に合理性があるとして、法テラスが本気で考えるのかな…とも思えます。

民事法律扶助に関しては、法テラスの報酬決定に不満なのであれば、弁護士本人が取りはぐれのリスクを背負って、分割で弁護士費用をもらうということをすることもできます。つまり、民事法律扶助は、そのシステムに対して多くの弁護士が不満を持ち利用しなくなれば、制度自体が立ちいかなくなるという問題があります。
なので、法テラス側も、なるべく弁護士の不服が出ないように、基準に裁量を持たせ、弁護士を審査担当に入れて援助開始や報酬の決定をするのでしょう。
しかし、国選の刑事弁護制度がなくなるということはありません。そのため、弁護士の不服というものに対して、法テラスは取り合わないのだろうとも思えます。

とはいえ、謄写費用がほぼ全額出るようになったり、基準自体に問題はあれど、弁護士の活動内容に応じて報酬加算がされるようになったり、長い時間はかかっていますが、国選弁護の報酬の問題は徐々に徐々に改善されてきています。

疑問があったりアイデアがあったりする弁護士が、そういうことを声にしていくことが、改善に結びつくと信じてやっていくしかないんだろうな…と少し遠い目になったところで、今日は終わりにしたいと思います。





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by terarinterarin | 2017-05-13 22:57 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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