性犯罪における「合意」のとらえ方について考えてみた。

ジャーナリスト山口敬之さんから準強姦の被害に遭ったにもかかわらず、警察が山口氏の逮捕を直前で取りやめ、山口氏が不起訴になったことについて、「詩織さん」という女性が検察審査会に不服申し立てをしたことが話題になっています。

山口氏も酒を一緒に飲んで詩織さんと性交渉を行ったところまでは認めているようですが、それでも自分のやった行為には違法性がないとSNSなどで発信しています。
女性との性交渉が犯罪にならないということは、法的には、山口氏の主張は「詩織さんとの間に合意があった」、あるいは「合意があったものと誤診した」ということになると予想されます。

強姦・準強姦で立件される場合、女性の膣内からDNAを採取して、被疑者男性と同型のDNAが検出されないか、当然鑑定します。
検出されてしまった場合、「合意の上でした。強姦ではありません」とか「合意があったと思っていました」という主張をする人がかなり多いです。

弁護人として関わっていると、本人の主張もごもっともで、「これは美人局とか、なにか金目当てなんじゃないか」としか思えないような案件もあります。一方、苦し紛れに「合意がありました」「合意があったと思っていました」などと言っていると思われるケースや、「どうしてそれで同意があったと思ったんだ…」と理解に苦しむケースが相当数あることも事実です。

ですが、一般的には、「女性がセックスに合意していたか」ということに関する捜査機関の判断は結構厳しく、有罪シフトで捜査が進められたり、起訴されることが多いように思われます(注:そもそも警察の「被害届を受理する」「事件化して捜査する」という判断は、どう表現してよいのかわからないのですが、かなりマチマチかつブレブレで、「こんなもんの被害届受理して、どうしてこっちは受理しないんだ」と怒りを覚えることも時にあったりします。そういうのを見るにつけ、警察の捜査って裏でなにがしか黒いものが動いているんだろうなと思わざるを得ません)。

例えば、バーなんかで知り合った女性に声をかけて、宿泊先のホテルの部屋に誘ったらついてきた。二人でベッドに腰かけていい雰囲気になってきた。チャンスだと思って男性が押し倒したところ、多少女性にバタバタされたけれど、大声を出されることもなくことを終えた、というケース(現在、5月31日12時10分。昼間から生々しいですなあ)でも、女性が警察に被害を訴えたら、男性は「強姦罪」で逮捕されかねません。実際、こういうケースで逮捕されたという話はいくつか聞いたことがあります。
男性にしてみれば、全然普通にOKと思われるケースではないかと推察しますが、これでも、女性の訴え次第では、最低限「強姦罪の容疑」で捜査対象になってしまい、場合によっては起訴されてしまうこともありうるわけです。

個人的には、(話を蒸し返すようですが)高畑裕太さんの一件は、本人の目線からするとこういう感じに近かったのではないかと思います。つまり、おちおちナンパもできないわけです。いい雰囲気になってきたので、野暮な言葉は出さずに阿吽の呼吸で…というのも、甚だしい勘違いになったりするということです。

ただ、こういうケースでは、迷惑料的な意味合いの示談金を支払う形で事件が終了することも少なくないかもしれません。

私が担当した事件では、おそらくは、「途中から合意がなくなった」と判断されて、逮捕されたであろう案件がありました。
知り合い同士の事件で、過去にも性交渉を何度もしていた人同士のことだったのですが、当初は性交渉に応じていたものの、途中から、男性側の行為に女性が拒絶を示したというケースでした。男性の側は、その拒絶の言葉も、いわゆる「プレイの一環」で(うーん、やはり生々しい)、性交渉の合意がその時点でなくなった、とまでは考えていないようでした。
個人的には、当時の状況からすると、示談が成立しなければ起訴もやむ得ないかもしれないと考えていました。が、幸い女性の処罰感情がそれほど厳しくなく、快く示談に応じてくださり(注:それほど高額なものをお支払いできたわけではありません。)、告訴も取り下げてくださって終了しました。

「性交渉に対する合意」というのは、当然「性交渉とは何たるか」ということを理解したうえで「性交渉をする」という認識を正常な意識下で持ったうえでOKを出した場合に初めて認められるものです。13歳未満の女子に対する姦淫行為が、暴行脅迫を伴わなくても強姦罪を構成するのは、年少の女子が「性交渉とは何たるか」ということを正しく理解できていないと一般的に考えられているからです。
そして、「合意」に対するこのような考え方を前提とすれば、お酒とか薬とかで意識朦朧となっている状況下で「いいよ~」なんて返事をしたとしても、そんなものは合意たりえないということになります。

また、先の条件を全部満たしたうえで女性が性交渉に合意したとしても、その意味は「この先何時までも拒まないし、どんなセックスされてもかまいません」などという趣旨に理解することは、おそらく極めて特殊な事情がないと不可能でしょう。
DV夫なんかが、妻に対して妻であることを理由に、拒絶の言葉を一切聞かずに無理やり押し倒して姦淫したりする話を聞いたりしますが、これだって、本来合意のない強姦になるはずなのです。
「セックスしていいですよ」と一度言ったからといって、いつまでも「まな板の上の鯉」になってくれる意思を表したとは言えないのです。

「嫌よ嫌よも好きのうち」が到底通じる理屈でないことはご承知の方も多いでしょうが、「好きよ好きよは今のうち」ということも広くご理解いただきたいと思うのでありました。

追伸
本当は今週は違うことを投稿したかったのです。本来書こうと思っていたことは、また近々…





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Commented by okuda at 2017-06-01 06:16 x
大変、わかりやすく、ためになる内容でした。自分以外の人の心の中は決してわからないと、言うことですね。忖度なんて通用しない?と、いうことです。しかし、その性交渉を始めようとする時に、特に若い男は冷静に判断することは出来ないということを、考慮してほしいものです。
Commented by terarinterarin at 2017-06-02 23:11
> okudaさん
そういうところに乗じる女性がいることをお忘れなく。男性のみなさん!!
Commented by Senkichi at 2017-06-04 05:59 x
高畑裕太さんの一件は、バーなんかで知り合った女性ではありませんね。ホテルのフロントで勤務中の人でした。
by terarinterarin | 2017-05-31 12:54 | Comments(3)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terarinterarin