任意事情聴取に付き添ってきました。

このブログで任意事情聴取における捜査機関の傍若無人ぶりをお伝えしてきました。
そんななか、テラバヤシ自身が任意事情聴取に付き添ってきましたので、そこから感じたこと、今後、必要と感じる取り組みについてお伝えしたいと思います。

なお、この事件は現在も捜査継続中の事件です。守秘義務の問題もありますので、このブログに記載した以上のことはお問い合わせいただいてもお答えできないことを予めご了承ください。

まず、私が任意事情聴取を受ける依頼者に付き添って警察署に赴いたのは今回が初めてでした。
意外に思われるかもしれませんが、法テラス時代は、原則として国選事件しか受けることができなかった手前、身体拘束前の被疑者の方の弁護活動を体験することができませんでした。その後も、裁判員裁判対象事件を中心として身体拘束されて以降の被疑者の事件を受けることばかりで、任意事情聴取段階の事件に縁がなかったのです。

まず、弁護人選任届を警察署に送るときに、一緒に「任意として許される範囲を超えることのないように強く求める」という趣旨の書面を警察署長宛に送りました。内容としては、自由な退出を認めること、供述を強要しないこと、供述調書等への署名捺印を強要しないこと等等を記載した、というところです。

その後、一度依頼者が一人で事情聴取を受けたところ、いくつか問題と思われることが散見されたため、「これは放置しておくとさらに様々、事実上威圧されて強要される」と思い、同行することにしたわけです。

警察署について担当警察官に会ってすぐに、「事情聴取に同席させてください」と言いました。事情聴取への弁護人同席を禁じる法規制はありません。ですので、特に任意事情聴取下では、本来認められてしかるべきなのです。
しかし、あちらは「同席してよいというルールもない」という実に警察らしい理屈で、同席を拒否しました。
一般の方はわからないかもしれませんが、民主社会のルールの基本は「規制がない限りは自由。合理的な理由で合理的な内容の規制のみが許される」というものです。
そういう民主社会のルールの根本について全く理解されていない回答が返ってきたというわけです。

しかも、この回答は実によどみなく担当警察官とその上司の警察官から返ってきました。つまり、警察全体の論理というわけです。

ただ、テラバヤシもここでごねる気はありませんでした(今の日本の警察でこれが認められる可能性は99.99パーセントないだろうと思っていたので)。
そこで、「同席がだめなら録音させてください」と言いました。
以前の投稿でも書きましたが、現在、被疑者が身体拘束されている事件では、原則全件録音録画の建前があります。
だとしたら、任意事情聴取下で録音できない理由がありません。
しかも、「任意」なのですから、こちらが録音することは本来自由なはずなのです。
ですが、依頼者は、以前受けた事情聴取で録音はしないでくれ、と言われていました。
友人から聞いた話だと、任意事情聴取であるにもかかわらず、その前に警察官が何の断りもなくボディチェックすることもあるんだとか(注:ボディチェックそのものはやむを得ないかと思ってはいます。やはり、刃物などの凶器を持っていれば警察官に危険が及ぶ場合もありますので。ただ、当然のように行うことは許されないと思いますし、まして録音機を取り上げるのは任意事情聴取の範囲を超えているでしょう)。

そんな状況だったので、あえて「録音させろ」と言いました。これも断られるのは想定の範囲内でした。
警察側の回答は「録音できるよう申立したのですが、許可が出ませんでした」というものでした。
いったいどこに申立をして不許可になった理由は何なんだと聞こうかな、と思ったのですが、あまりにここでゴネて捜査妨害だのなんだのと突っ込まれると、却って、被疑者に不利益になるかもしれないと思い、それ以上は追及しませんでした。

そこで、最後に「依頼者が私に相談したいと言ったら、いつでも相談させるように」と言いました。
それはさすがにOKで、結果私は取調室にごく近い廊下のベンチで、待機することになりました。
事情聴取は、当初予定されていた時間通りに終了しました。
依頼者から報告してもらった限り、特段の問題はありませんでした。

身体拘束下の被疑者の弁護活動については、相当程度パターン化ルーティン化しており、それ相応に刑事弁護をしている人であれば、大きく外れる活動をすることはないだろうと思います。
身体拘束されていない被疑者の弁護活動も、同じようにパターン化ルーティン化し、多くの弁護士が「はずれのない活動」をすることができるようになることが、先日来発信している「任意事情聴取」を回避することに極めて重要であると思います。

弁選を提出するときに、一緒に「任意事情聴取を逸脱しないように」注意喚起する書面も渡しておく。
弁護人同席や録音の申し入れをする。
事情聴取の問題が判明した場合には、早急に抗議する。
そして、何より重要なのは、早い段階で一度は依頼者と一緒に警察署に赴くということだろうと思います。
「こういう弁護士が付いているんだ」という現実を捜査機関に突きつけることは、「下手なことはできない」というプレッシャーを警察官に与えることになります。
不当な事情聴取により一般の市民が苦しめられるのを回避するには、これが現状一番であることは確かでしょう。

もちろん、任意事情聴取なのだから、そもそも応じる必要がない、応じなければ、先に書いたような問題も生じないという考え方もあろうかと思います。
ですが、一概にはそういえないと思います。応じるか応じないか、応じたとして話すか話さないかは、逮捕のリスクとの兼ね合いで検討すべき問題ではないかと思います。
そういう戦略を立てるためにも、やはり、任意事情聴取段階での弁護人の存在は重要だと思うのです。

以前も書いた通り、今まで、日弁連や各単位会における被疑者被告人の権利擁護活動は、被疑者被告人が身体拘束されているケースが中心でした。
歴史をさかのぼれば、それは必然であり、やむを得ない対応だったと思われます。
身体拘束下での取調べは、可視化をはじめとしていくつかの規制がなされるようになり、以前に比べれば随分マシになりました。
そして、裁判所も(特に東京地裁は)、勾留請求を却下することが増え、不必要な身体拘束が回避されるようになってきました。

身体拘束がなされていない事情聴取には、裁判所の目も届きません。
「しょっぴいて吐かせる」ことが難しくなってきたので、捜査機関は、監視の目が及びにくい任意事情聴取段階で、過去、身体拘束下でおこなってきた事情聴取を再現しようとしているわけです。

私は、多くの弁護士に任意捜査段階の弁護活動を実践してもらいたいと思っています。
そして、そのノウハウを多くの弁護士で共有することが望ましいと思います。
日弁連や法テラスが、任意事情聴取に対する弁護活動に費用を出す仕組みを作ってほしいと思います。
より多くの任意捜査の対象者が弁護士にたどり着くことができるようにするためです。

こういう活動の広がりの中で、身体拘束下の取り調べの録音録画が制度化したように、任意事情聴取の全権録音録画、弁護人の同席の制度化が実現できれば、と思うのでありました。



[PR]
by terarinterarin | 2017-06-11 17:54 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terarinterarin