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友達にお金を貸したんだけど、返してくれない。
息子に生活費が足りないと言われて合計で300万円も渡したのに、返してくれと言ったら、「なんのこと?」としらを切られてしまった。

「どうすればいいですか?」
「取り返したいんですけど」

などという、「貸した金返してほしい」という相談を、よく受けます。

その時に、絶対に聞くのが、「借用書はありますか?」です。
8割方、答はNOです。

次に聞くのが、大体、「じゃ、あなたがお金を貸したことやその金額、返さなきゃならないことを相手が認めていることがわかる記録はありますか?メールとか(注:最近は、これにLINEなどのSNSも含まれます)でもいいんですけど…」
これも、NOのことが多い。

さらに、「じゃ、お金貸すときに銀行から引き落としたりしましたか?引き落としの記録があるといいんですけど…」と聞くと、「手持ちのを貸しちゃったしなあ…」とか「何日か前におろしたお金の中から貸したので…」という答が、案外多い。

こうなると、閑話休題です。
相手がしらばっくれてしまったら、それ以上、裁判を起こしたりして返してもらうことはできません。

裁判を起こして相手から貸したお金を取り立てようとする場合、「相手に○○円を○年○月○日に貸した」「そのときに、相手は○年○月○日に返すと約束した」「相手からはまだ返してもらっていない」という事情は、全部、訴えた側が証拠を出して証明しなければなりません。

そして、その証拠というのは、貸した側の証言だけでは全然足りません。
一番有益な証拠は借用書です。
借用書がない場合には、相手が、お金を借りたこと返す日時を約束したことがわかる他の資料が次に有益です(と思います)。先ほど挙げたメールは、その例です。
それもない場合には、引き落としの記録、日記、メモ(日付がないとアウトですが)を駆使します。

大金を貸したのに返してもらえないということは、よくよくありがちなことです。
個人的には、友人知人に簡単に金を借りようとする人は、友達を大切にしないよくない人だと思っている(もちろん背に腹が代えられずやむを得ずそうしている人がいることも認めますが)のですが、もし、頼まれた時に「お金を貸す」という選択をする場合、「あげたもの」と割り切るか、割り切れない場合には、「借用書」をとってください。

そして、その借用書には、貸したお金の金額、貸した日付、「確かに借りました」というセリフ、できれば返済予定日を、相手に書いてもらってください。
それが最終的に自分を守ってくれることになります。

ただ、実際には悲しい現実が待っています。

友達や親に大金を借りる人は、そもそもお金がない経済的に苦しい人だったりして、その後、劇的に経済力が回復するということもまずありません。

そのため、最終的には、裁判を起こす費用の損を被るだけという結末が待っている場合もあります。
弁護士としては、借用書があるとしても、貸した状況等を聞いたうえで「回収は難しいでしょう。費用倒れになりますよ」と宣告することも少なくありません。

実際、「どうしても」と言われて、返済を要求する内容証明郵便を送ったところ、間髪入れずに「自己破産をすることになりました」という連絡が、相手の代理人から届いたりしたこともあります。

やっぱり、簡単に他人にお金を貸すのは考えもの、なのです。






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by terarinterarin | 2014-05-30 18:25 | Comments(1)
再び&今更のASKAネタです。

なんですか、ここ1週間見たテレビのいくつかで、「脱法ドラッグの恐ろしさ」みたいな特集をやっていました。おそらく、ASKAが、逮捕当初「アンナカだと思ってた」なんて言っていたからだと思うのですが(ただ、非常に「脱法ドラッグ」の定義ってあいまいだなと思っています)。

確かに、いわゆる「脱法ドラッグ」というのは、覚せい剤など違法ドラッグと類似の効果のものがありますし、怖いということは間違っていないですし、それを啓蒙すること自体も間違ってはいません。

ですが、個人的に、もっと怖いのは「合法のお薬の乱用」だと思っています。
つまり、精神科や心療内科で処方される睡眠薬や、向精神薬等々の類の薬です。

「ドクターショッピング」という言葉をご存知の方って、どれくらいいるんでしょうか(同業者の中には、比較的多いと思うのですが)。
これは、睡眠薬や向精神薬を大量に手に入れるために、精神科や心療内科をはしごすることを指す言葉です。

私がこの言葉を初めて聞いたのは、弁護士3年目くらいのときでした。当時私は名古屋で仕事していました。
担当していた事件の関係で、薬物依存(合法、違法問わず)治療の専門クリニックの医師を訪ねて行ったときの話です。

手当たり次第に心療内科や精神科に行っては、自分の症状(寝られないとか抑うつだとか)を訴えて、欲しい薬を手当たり次第に処方してもらう。
中には、薬の銘柄を指定する人もいるんだそうです(こういう方は、作用がきつい薬を好む人が多いんだそうです)。
で、手に入った薬をちゃんぽんで数十錠一気飲みするという…
これにお酒がプラスされちゃうこともあります。

一気に寝てしまうのであれば、対外的に問題を起こすこともないでしょうが(もちろん死の危険があるので胃洗浄の必要とかはあり得ますが)、前後不覚の状態で万引きをしたり、妄想に取りつかれて人を傷つけたり、なんて事態に陥る人も少なくありません。
事件を起こさなくても、夢や幻覚を見ているような状態に陥って奇行を繰り返す…なんていう人もいます。
リストカット癖を同時に持っている人も少なくないようです。

覚せい剤や脱法ドラッグには「依存性」があり、やめるのが難しいとよく言われます。
でも、やめた人を私は何人も知っています。
要は「使っているのがばれたら捕まる」ということを学習すれば、「捕まるのはいや」と思える人は、やめることができる(場合もある)のです。

ですが、合法のお薬の場合、症状があれば処方してもらえます。お薬手帳でもない限り、他で同じものを同時期に処方されているなんてことはわかりませんから(勘付いていることはあるにせよ)、どんどん処方されちゃう。
事件を起こさない限り、強制的にストップさせられることもない。

やめる機会を得にくいわけです。

仕事柄、今まで何人かの精神科医にお会いしていますが、中には、「こういう人に薬をやめさせるためにはペナルティを与えることが必要なんだよね」なんて言う人も複数いらっしゃいました。
薬を飲んで前後不覚になって事件を起こしても、「自分がわからないうちにやりました~」と言えば、許してもらえる。そう思っている限り、絶対治すモチベーションが起きない、というのです。

刑務所という施設の中の悲惨さ(特に医療体制の悲惨さ)をわりによく知る寺林としては、入らずに済むならそんなところ入らないのが一番だと思っているので、そのお医者さんの意見は何とも承服しかねます。
しかも、事件起こしてない人はどうすればいいわけという話にもなります。

じゃ、どうすればいいのかと言われると、家族が薬を管理するというのも、こういう人の場合隠れて飲んだりするので難しく、妙案が浮かんでこないのが実情です。

まずは、ご家族がお医者さんに相談してください…としかいえない状況です→本人にモチベーションがなければ元も子もない。

ですが、それだけに、最初に書いた通り「合法な薬の乱用の方が怖い」ということは、わかってもらえたんじゃないのかな、という気がするのです。









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by terarinterarin | 2014-05-29 01:21 | Comments(0)
弁護士業界の首を絞めかねない禁断のネタかもしれません。

初ブログのときも書きましたが、私は、元々法テラスというところがやっている法律事務所にいました。

この法律事務所は、経済的に苦しい人などの民事事件や家事事件、国選の刑事事件を専門的に受けるところでした。

そんなわけで、私の場合、契約を結んだり相談を受けたりするときに、今でも、「できるだけ依頼者の経済的負担を減らせれば」と考えてしまいがちです。

もちろん、頼まれる内容によっては、ある程度の着手金や報酬金をいただくことにはなります。

ただ、最近の家庭裁判所や簡易裁判所は、一般の方にとても親切で、受付で「こういう申立をしたい」と告げると、申立書の書式をくれたり、必要な添付書類を懇切丁寧に教えてくれちゃったりします。
また、どう考えても弁護士に頼んだら、費用倒れになってしまう事件というのもあります。

で、私の場合、そういう事件については、相談を受けた場合、「ご自身でもできると思いますよ」とか「あなたが却って損をするので勧められない」と率直に伝えます。

その「ご自身でもできると思いますよ」という事件の、割と代表的な例が「相続放棄」です。

相続放棄は、読んで字のごとく、亡くなった方の相続を相続人が放棄するという制度です。被相続人が亡くなったことを知ってから、原則として2か月以内に家庭裁判所に対して申立ることによってすることができます(この期間は伸ばしてもらうこともできます)。

例えば、亡くなった人が借金まみれだった場合、普通に相続すると、相続人はこの借金を払う義務も相続分に応じて負うことになってしまいます。そういうことを回避するために主に用いられます(注:生命保険金は相続財産に該当しないので、相続放棄をしても受け取ることができます)。

管轄の裁判所は、被相続人の最後の住所地です。ぺら2枚程度の申立書と、関係図、住民票、それから戸籍謄本を提出することによって相続放棄ができます。
申立書も、難しい法律用語でいろいろ書く必要はありません。記載例を見れば、大体のみなさんが作成できる程度の書面です。

戸籍謄本については、亡くなった方と相続人が「つながる」ことがわかることが必要です。
ですから、例えば、ご主人が亡くなって奥様だけが相続人の場合とか、まだ未婚で、分籍などを行っていない子の場合は、戸籍謄本(全部事項記載証明書というもの)1通出せばよいので、資料集めもとても簡単です。

結婚して、別戸籍になった人の場合には、自分の現在の戸籍と亡くなった人の戸籍を提出することが必要になります。

通常は、申立書1通と戸籍謄本や住民票数通を出せば足りますし、手数料もお安い、しかも、管轄裁判所が遠隔地でも郵送での申し立てが可能。
申立書は裁判所のホームページからダウンロードできますし、最寄りの家庭裁判所からもらってきたものを使用してもOKです。

基本的には、十分弁護士なしでできる手続です。
ですから、もし、こういう事態に陥った場合でも、まずは自分でできないか考えてみることをお勧めしたいのです。

ただ、では、私が今までに一度も相続放棄の事件を受けたことがないかというとそんなことはありません。
何回か事件を受けたことがあります。
そこで、弁護士に相続放棄を依頼したほうがいいだろうと思われるいくつかのケースを紹介したいと思います。

まず1つ目は、亡くなった方の資産状況がわからず調査が必要な場合です。
このような場合には、調査をしながら、期間延長の申請をしたりなど、配慮すべきことが増えてくるので、弁護士に依頼したほうがよいと思われます。

また、訳あって被相続人が亡くなってから2か月以上経過した時点で、その人が亡くなったことを知った、あるいは相続放棄の手続をしなければならなくなったという場合が挙げられます。
この場合は、遅くなった申立を正当化するような資料の提出がある程度必要になるので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

さらに、結婚や離婚、養子縁組や離縁を繰り返したために、戸籍が何回も新たに作成され、被相続人の戸籍に「たどりつく」までにかなり戸籍を手繰り寄せる必要がある場合、が挙げられます。

弁護士は、事件処理のために正当な理由がある場合には、対象者の戸籍や住民票を取得することができます(ただ、個人情報の不当な漏えいを防ぐために、取得するための手続は昔に比べてかなり厳しくなりました)。
たくさんの戸籍を取得するためには、一般の方は基本的にその役所に出向くことになるでしょうし、郵便で請求する場合にも的確に必要なものをとるのは難しいものです(実は必要な戸籍をとるには、ある程度のテクが必要なことがあります)。
ですから、こういう場合にも弁護士を頼ってもらった方がいいと思います。

身内の方が亡くなられたすぐあとは、悲しみも癒えないので、なかなか必要な法的手続を迅速に取ろうという気持ちにはなれないかもしれません。
しかし、ある程度、喪の儀式が済んだら、まずは家庭裁判所に相談しに行ってみてください。
そして、自分自身でできるかどうか不安だったら、受付の職員に「弁護士さんにお願いしたほうがいいんでしょうか」などと聞いてみてください。
最近の裁判所の職員の方は(期待も込めて)来所する皆さんに優しい(はず)ですから、きっと、適切なアドバイスをしてくれることと思います。

ってことで、全国の家裁の受付のみなさん、よろしくお願いします。


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by terarinterarin | 2014-05-27 23:17 | Comments(0)
通勤や移動の際に電車や地下鉄に乗っていると、たまに、女性の手荷物を見て、うらやましくなる時があります。

なんて荷物が小さいのだ!!

本当に手荷物が小さい人だと、20センチ四方くらいの大した厚みもないバッグひとつ…ということもあります。

我々弁護士は、女子といえど、ある程度の大荷物をしょって出歩くことを運命づけられているといっても過言ではありません。
とはいえ、女性用のバッグって、作りがきゃしゃで、あまり大きなものがありません。
そのため、複数のバッグを持ち歩いている人が多数。「ころころ」愛用者も少なくありません。

弁護士のカバンの中に入っているもの。
まず第一に、事件の記録です。裁判所に行くとき、警察署や拘置所に被疑者(世間的には容疑者、ですね)被告人に面会しに行くとき、その事件の記録を持ち歩いているのです。
これがかなりかさばる。基本的にはA4版のファイルになります。
そして、大事件になればなるほど、そのファイルはどんどん分厚くなっていき、場合によっては二分冊、三分冊、それ以上になるなんてことも。

もちろん、こういう紙データについては、全てPDF化してしまい、iPadなどのタブレット端末ひとつで対応しているという弁護士も最近は出てきました。しかし、紙データを全てPDFにするのは面倒だし、タブレット端末で見るときには、タグ付けとかファイルを別にするとか、必要な時に必要なデータをすぐに引き出せるようにしておく必要があります。その手間も、結構なものです(事務に説明するのもめんどう)。

さらに、クラウド管理するのも怖いので、端末に入れるとなると、容量の問題にも気を遣わねばならない。PDFは容量が大きいデータなので、事件が終わったタイミングで、マメに消去したりすることも必要です。

これが面倒くさくて、重いとは知りながら、紙データを持ち歩く人もいます。特に高齢の弁護士になると、おそらくついていけていない人が多数だと思いますし。

そして、パソコンを持ち歩いている人も少なくありません。
これは、事務所にいる時間が少ない場合に、移動時間や弁護士会の会議出席時間などを利用して、ちょこちょこ仕事をしようとする人に多くある傾向です。
特に刑事弁護中心の仕事をしている弁護士は、パソコン持ち歩いている人が少なくありません。

5,6年前までは、弁護士業界で圧倒的シェアを占めていたのは、パナソニックの「Let's note」でした。
何しろ、耐久性抜群なので、持ち歩きにはもってこいだったわけです。ちなみに私が今プライベートで使っているパソコンも、Let's noteです。

が、Mac Airの登場により、勢力図がガラッと変わりました。今や、Let's note派はやや少数派。
Mac Airの利用者がかなり増えています。また、軽いという点でウルトラブックのシェアがかなり伸びていると思います。

とはいえ、いくら軽いといっても、パソコンの重さは1キロ切れることはほとんどないわけですし、タブレットを併せ持つとなると、さらに、WiFiルーターが必要なんてことにもなります(なんと私の知人で、WiFiルーター2台持ちという人もいます)。

加えて、スマホに通話用のピッチに…とフル装備になっていくと、モバイル系の荷物だけで、2~3キロくらいは軽くいってしまう、という事態になるわけです。

もっとも、モバイルにここまでこだわっている人って、男性弁護士に多いことは確かですが…

寺林の場合は、PCは必要な時しか持ち歩きませんが、タブレットはいつも持ち歩いています。
300グラムないアクオスパッドを愛用しています。また、iPhoneには仕事用のアプリを結構入れているので、移動中に急な対応が必要となった場合、8割方はこの2つで足ります。

訴訟があるときは仕方ありませんが、例えば、単に記録を読むために持ち帰るという場合には、「4in1の両面コピー」という技を使って、記録を圧縮しています。
つまり、事務所の複合機で、4分の1の大きさに圧縮したA4の記録を表面に4枚コピーし、それを裏面にもやるという…
基本的に、資料なんかは紙で見ないと頭に入らないアナログなタチでありつつ、大荷物は持ちたくないというわがままな人間なもので、多少、紙が無駄になっているかなと心苦しく思いつつも、この方法を愛用しているのです。

が、最近、近視に加え、若干老眼気味のようで、薄暗い時には、4分の1に圧縮した小さな字が見えにくくなってきました…

結構頑張って荷物を小さくしているつもりなのですが、いつも「重いなあ」と思いながら、幅40センチくらいのトートバッグを持ち歩いています。

なんでこんなに荷物が重いんだろうと思ったら、お弁当と水筒のせいなのでした…

まあ、体が資本なので、これも必需品と言えば、必需品ですが。








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by terarinterarin | 2014-05-26 21:33 | Comments(0)
きっと、弁護士で同じネタで書いている人が結構いるんだろうな・・・

AKB48握手会で刃物男乱入のニュース。
衝撃的だったのは、人気メンバーの川栄李奈ちゃんと入山杏奈ちゃんが負傷したこと。
握手会って、考えてみたら危険極まりないイベントですよね。
今後、実施されるのかな。これ、AKBの伝統的な目玉企画ですけど・・・

今日は、事件を起こしちゃった人がその後どうなるのか、ということをお話しします。

この手の事件や通り魔事件などなど、「えっ」という状況で、人を傷つけたり殺そうとしたりする人は、一過性にせよ継続的なものにせよ、精神的な問題を抱えていることが少なくありません。

私自身も今まで刑事事件を割にたくさんやってきましたが、この手の事件の被疑者被告人の方々は、統合失調症とか、人格障害とか、その他もろもろの精神的問題を持っている人ばかりだったと言っても過言ではありません。

これは、精神科の医師に聞いたことでもあるし、自分の経験からもそうだと思うのですが、病気の重さと事件を起こすかどうか、どの程度の事件を起こすかということには、特に関連性はありません。
ごくごく軽い問題しかない人が、世間をにぎわすとんでもない事件を起こすこともあれば、普通に生きていくのがかなりしんどそうな重い重い疾患の人が起こすのが、かなりしょぼい事件ということもあります。
ここは、法律家としては、突き詰めても仕方ない問題かな、と思っています。

「事件を起こした人に精神疾患がある」となると、「責任能力」とか「精神鑑定」という言葉を思い浮かべる人も多いことでしょう。

まず、実際の裁判で、被告人の責任能力が争われることは、実は数の上ではそれほどないですし、まして「責任能力がない」と判断されて、その人が無罪になることは極めてまれです。

それは、責任能力がかなり危うい人については、逮捕されてから裁判にかけられ、判決を受けるという刑事手続のルートのどこかで、そのルートから外れうる仕組みがあるからです。

まず、前提として、事件の態様や事件と起こした本人の動機が突飛な場合、捜査機関は、その人に精神疾患がないかどうかを疑います。病歴が出てくれば、かかっていた病院に照会をかけますし、場合によっては診療録を取り寄せたりもします。そして、必要と判断した場合には、精神鑑定を行います。
この精神鑑定は、実は「簡易鑑定」と呼ばれるものと「起訴前本鑑定」と呼ばれるものに分かれます。

「簡易鑑定」は、読んで字のごとく、ごくごく簡単な鑑定で、多くの場合、各地の検察庁のお抱えの精神科の先生が1~2時間程度の問診と、検察官から渡された資料を基に責任能力の有無を判断します。
軽微な事件や、裁判員裁判対象の重たい事件でも「まあ、まず責任能力には問題がないだろう。だけど念のために」という場合に用いられることが多いという印象です。

この結果、責任能力に問題ありとなると、軽微な事件の場合には、その人は強制入院の一種「措置入院」という処分を下され、精神科に強制入院させられる場合があります。
理論的には、責任能力の問題だけではなく、その時点で「他害の恐れ」つまり他人に危害を与える恐れがある場合に、措置入院させられることになります。

重たい事件で簡易鑑定を実施した結果、責任能力に問題があるかもしれないなんて結論になったら、さらに詳細な鑑定を行うために、「起訴前本鑑定」を検察官の判断で行うことになるわけです。重たい事件の場合、検察官が病歴から必要と判断すれば、いきなり起訴前本鑑定を行うことも結構あります。

そして、起訴前本鑑定で責任能力がないなんて結果が出たら、検察官は、ほぼ100パーセント、その犯人を起訴しません。
殺人や現住建造物放火(人が現住している建物に対する放火)など、一定以上の重たい犯罪の場合には、不起訴処分とした後、医療観察法という法律に基づいて強制入院させるために、裁判所にその判断を求める申立を行います(まれに、起訴されて無罪判決が出た後にこの申し立てがされる場合もあります)。これが認められれば、犯人は入院させられ、手厚い体制で治療が施されることになります。

で、「措置入院」と「医療観察法に基づく入院」、どこか違うかというと、入院させることができる期間に大きな違いがあります。

措置入院は「他害」の危険がなくなれば、退院させなければなりません。治療が目的ではないのです。
ですから、極端な話、翌日に退院、なんてこともあり得ます(実際には、その後、家族や市町村長の同意によって医療保護入院というものを用いて引き延ばすことはできます)。
これに対して医療観察法に基づく入院は、治療が目的なので、入院期間は相当長期に及びます。

精神的に問題がある人のストーカーなんかの場合、逮捕しても責任能力がなければ措置入院、大人しくなったので退院させたら、またやっちゃって、また入院、なんてことの繰り返しになるわけで、ストーカーされている人にとっては、気の休まる時が一時だけ、という気の毒なことになってしまいます。

でも、日本の法律がこうなってしまっている以上、どうしようもない。

法律家でこういうことを言うと、「人権軽視!!」とかって怒られちゃうかもしれませんが、個人的には、医療観察法的な制度をもっと拡大することが必要なんじゃないかと思っています。要は、「病気がもとで他人に危害を加えそうな人は、徹底的に治療する」という制度を作るということです。

私が子供のころの日本では、こういう他人に危害を加えちゃいそうな人は、結構長いこと精神科に入院させられることができたのですが、人権侵害がどうだとかいう批判が高まったこととか、病院の過剰収容て国家予算が圧迫されただとか、あと医師不足だとか、その辺の理由で、おそらく「よっぽどまずい人じゃない限り社会内で処遇」という現行の法制度に改編されてしまったわけです。

で、そうしたら、通り魔だとか、今回みたいな事件だとかが頻発するようになってしまった。

ドイツなんかは、他害の恐れがある人については、病名が付かなくても隔離施設に入れられる制度があるそうですが、人権侵害云々という批判はあまり受けてないらしいです。
それは、施設内の処遇について徹底的なチェックを入れて、入院している人に対して不当な人権侵害が生じるのを予防しているからのようです。

要はバランスの問題だと思うのです。

人権人権って、そりゃ病気の人にも人権はありますが、普通に生きている一般人にも人権はあるわけで、病気の人の人権を守る結果、他の人々が危険にさらされるようなことになったら、元も子もない。
それに、その病気の人だって、好きで病気になったわけではなく、事件を繰り返して病院とシャバ、刑務所とシャバを行き来するだけの人生にさせられるのは、運命という一言で片づけるには、あまりにむごい。

人を傷つけないようにするために隔離して治療はするけれども、それ以外に不要な人権侵害はしない。
そういう制度を早いとこ立ち上げないと、この日本って国は、いつどこでどんなことに巻き込まれるか、どんなことをしでかしてしまうかわからない、悲惨な国に成り下がってしまう気がしてならんのです。




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by terarinterarin | 2014-05-25 23:39 | Comments(6)
わりにあっさり、ASKAさんが、覚せい剤をホントはやってたと認めちゃいました。

ウェブ上では、「SAY YESなのに否認なのか」とか「チャゲ&アンナカ」とかの小ネタがここ数日飛び交っていましたが、個人的には「否認は難しいよなあ」と思っておりました。

日本の刑事裁判では、無罪判決の率が非常に低い…というのは、わりと有名な話です。なかでも、覚せい剤使用の事件は、格段に無罪になる率が低いんじゃないかと思います。

覚せい剤の使用の疑惑で逮捕されたら、必ず尿検査をします。捕まった人が自発的に尿を出さなかったら、カテーテルという道具を使って、病院で強制採尿されます。
で、陽性反応が出たら、まずアウト。

陽性反応が出る→都合2週間以内くらいの間に覚せい剤(あるいはそれと同じ成分)を摂取した→覚せい剤は誰でも簡単に手に入るってもんじゃない→自分で手に入れて自分で使用した疑惑濃厚→疑惑を覆す事情がない限り、有罪

ということになるわけです。

こういう具合なので、尿検査の結果、「覚せい剤(あるいはそれと同じ成分)が体内に入ってしまったこと」が明らかとなってしまった人は、主に「自分で体内に入れようと思って入れたわけではない」という弁明を刑事さんや検事さん、果ては裁判官にすることになります。

もっともよく聞くのは、「自分が知らないうちに飲み物の中に入れられた」というものです。例えば、「同居している女が自分を陥れようとして、ジュースの中に知らない間に混ぜやがった」なんて言い訳です(注:覚せい剤の摂取方法は、注射、炙って煙を吸う、溶かして飲むに分かれます)。

大概、こういう場合、注射器なんかが家宅捜索で見つかったりして、アウトになります。私自身は担当した方にこういう言い訳をされたことはありませんが、修習生の時代に裁判傍聴で見たことありますし、友人が担当した人がこういう言い訳していたというのも聞いたことがあります。

当然、両方とも有罪でした。

あとは、「自分は嫌で抵抗していたのに、無理やりされた」というのもあります。例えば、彼氏が性交渉の前に気持ちよくなるからやろうと誘ってくる→いやでいやで抵抗する→体を押さえつけられて打たれるというストーリーなどです。

まあ、暴力を振るわれた形跡が残っていれば通りうるかもしれませんが、たいていは、責任のなすりつけと評価されて、勝てません。

そして、一時期流行ったのが「キムチをいっぱい食べて覚せい剤反応が出た」というもの。

これは、今までお話ししたのと違って、「覚せい剤はやってないんだけど覚せい剤の反応が出ちゃった」という否認です。
どうやら、キムチの中には、ごくごく微量の覚せい剤成分が入っているらしいのです。真偽のほどはわかりませんが…
で、たくさん食べたら、こんなことに…と弁明が、流行?した時期があったのです。私自身は経験していませんが、よく聞きました。

しかし、仮にキムチに覚せい剤と同じ成分が入っていたとしても、尿検査で陽性反応が出るには、気の遠くなるような量のキムチを食べなければならないわけで、こんなことを接見の際に言われたりしたら、弁護士としては、「さて、どうしたもんか。このまま否認させていいのか」とかなりひるみます。

特に経験の浅い新人さんなんかが、おそらく、何回もシャブでお縄ちょうだいになっているベテランさんにこんなこと言われた日には、もうどうすればよいのか、オロオロです。

テラバヤシとしては、キムチの話はともかく、「知らないうちに飲み物の中に入れられていた」とか「彼氏に無理やりやられた」という言い訳の中には、一定数、真実そうだというものが含まれているように思います。

特に、暴力団なんかだと(昨今の暴力団は表向き、シャブはご法度ということになっているようですが)、からかい半分というか、お遊び感覚で兄貴分が下っ端に飲ませることなんかもあるんだそうです。
多くの場合は、薄々勘付くのでしょうが、本当のお子ちゃまだと気が付かない場合があるんじゃないんでしょうか。

性交渉の際に無理やり…なんていうのは、もっとありそうです。

ただ、どれも密室での出来事なので、周りにシラを切られたら終わりになってしまうのです。

さて、ASKAさんは、当初「アンナカだと思ってた」と主張していたわけですが、どうして、自白しちゃったんでしょうか。
弁護士が説得したんでしょうか。
そうだとしたら、どうやって説得したんでしょうか。気になります。

なぜなら、弁護士としては、「自分の依頼者の言い分を信じる」というのが、まずは活動の大前提になるからです。
なかなか正面切って「あんたの言ってることは信用できない」なんて言えないのです、よっぽどのことがない限り。
トラブルになるリスクが、髙いですから。

いずれにせよ、ASKAさんの弁護士さんは、片山さんの弁護士さんと違って、逐一報告しないところが正しいと思います。
言い分がどう変わるかなんて、わからないのです。
そして、しゃべればしゃべるほど、余計な尾ひれがついて、週刊誌のネタにされるのです。
ASKAさんや周囲の人のことを考えると、絶対にしゃべらないほうが賢明です。

守秘義務を負っている弁護士が、べらべらと依頼者とのやり取りやプライベートを、世に吹聴すると、ろくなことにはならんのです。










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by terarinterarin | 2014-05-24 01:13 | Comments(0)
はじめまして。

本日からブログを始めました。
弁護士の寺林智栄(40代 女性)と申します。

東京は恵比寿の法律事務所にて、30代の男性ボスとともに弁護士稼業を営んでおります。

本日開店なので、若干の自己紹介を。

ワタクシ、10年の受験生活の末、30代後半で旧司法試験に受かりました。
1年4か月の司法修習後、法テラスのスタッフ弁護士なんてものを4年半ほど経験し、2013年の4月に現在の琥珀法律事務所なるところで執務を開始した、という経緯でございます。

ま、自分の経歴(年も年なだけに、まあ、それなりに色々あります…)については、追々このブログの中で紹介していければ、と思っております。

本日のところは開店のお知らせということでこの辺で。

末永く、よろしくお願い致します。





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by terarinterarin | 2014-05-23 17:00 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terarinterarin