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少年事件の思い出

独立開業して、もう2週間が経ちました。
月日が経つのはなんとやら、と申しますが、ほんとに「あ」という間に2週間経ってしまった感じです。
「あ」という間に2週間経ったのは、開業早々、立川支部の裁判員対象事件(といっても捜査段階)の二人目の弁護人にお誘いいただき(Fさん、ありがとう)、数日後に委員会派遣でさらに刑事事件がドン、そして、選択修習での講師などなど、バタバタと?動き回ることが多かったからではないかと思います。

あんまり忙しい忙しい言ってると、仕事来なくなっちゃうかもしれないので、あえて言いますが、「まだ、仕事できます」。体調も回復傾向ですし。

さて、開業して始まった事件もあれば、開業前からやっていたもので、そろそろ終わりそうな事件もあります。
来週の審判でおそらく(よっぽどのことがこの数日で起きない限りは)終了するであろう、少年事件がそれです。
あまり詳しくは書けませんが、前にいた琥珀法律事務所のボス、川浪弁護士と、結構ぎりぎり頑張って(とこれくらいの表現で自分をほめるくらいは許されるだろう)第1回審判で試験観察をもぎ取り、案外早く(かなり少年ががんばった!!)第2回審判を迎えるという事件です。

刑事事件のイメージが強いらしい私ですが、少年事件の経験はそれほどありません。
弁護士7年間で、5件(うち1件は、家裁送致後に成人になって逆送されたので(注:要は少年審判ではなく成人用の裁判で裁かれた)、純粋に少年事件とカウントしてよいか?とやや疑問)。可塑性に乏しい?成人の事件ばかりを普段やっているわけです。
それに(今後の仕事のために、あんまり言わないほうがいいのかもしれませんが)、実は、少年事件は、あまり好きではありませんでした。
審判が行われる前に捜査機関が集めた本人にとって都合の悪い証拠ばかりを既に裁判官(いや、審判官ですね)は見ているし、社会記録(少年の生活歴や心理検査などの結果を記した記録)は謄写できないとか、いくら未成年という「保護の対象」相手とはいえ、手続自体が非常に不公平で一方的な気がしてならんのです。

さらに、いいだけ年を取って?すっかり性格がねじくれた偏屈ばばあの寺林にとって、少年は常に「かわいい」存在ではありません。
「なんちゅう、くそ○生○気なことを言っておるのだ…」
「…世の中わかってないのに、わかったような顔をするな!!」
などなど、心の中で悲痛な叫び(というか毒づき)を繰り返すことも少なくはないのです。

まあ、しかし、実は5件のうち3件は、名古屋から東京に戻ってきてからの3年弱の間に担当したもので、どれもそれなりにヘビーな案件だったおかげで、多少、少年事件への対応の仕方も身についてきたかな、と思えてきた今日この頃だったりします。

少年事件といえば、思い出すのは、新人のころに初めて担当した事件です。
この事件、正しくいえば「担当させてもらった」事件でした。
法テラスで名古屋に赴任することが決まる前後のことです。
ちょうど、このころ、裁判員裁判開始前の模擬裁判が各地で法曹三者により行われていました。
私も担当させてもらいました。
私が担当した模擬裁判の弁護団にいた、大先輩のT弁護士に、実は少年事件をまだやっていないと話したところ、ちょうど担当している私選の事件があるので一緒にやりましょうと、誘っていただいたのです。

あまり詳しく書けませんが、ある少年が深夜、わいせつ目的で、自分の前を歩いていた女性の口を塞いだという嫌疑(強制わいせつ未遂)をかけられた事件でした。
否認部分があったので、その場面に至る経緯を、審判の際に、付添人から質問することになりました。
その質問を私が担当することになりました。
事件当時、少年は、皮の手袋をしていました。
皮の手袋をどのタイミングではめたのか、についても、審判で質問しました。
少年は、接見で繰り返し確認したとおりに話してくれました(確か)。
質問は、尋問の経験がそれほどなかった割に、まあまあうまくいったかな、と終わった直後、思っていました。

が、数日して、私は、ハタと気が付きました。
北海道弁を使って質問してしまったことに。

北海道では、手袋を装着することを「手袋をはく」と言います。漢字を当てはめると、たぶん「履く」になると思います。
これ、北海道以外の人からするとかなり奇異な語感の方言のようで、北海道人以外の人に対して、「手袋をはく」と言うと、十中八九「は?」と言われます。
長らく住んでいた札幌は、北海道の中でも訛りが比較的弱い土地と言われています(コールセンターが多いのもそのせいと言われますよね)。
とはいえ、「オルガン」とか「コーヒー」とかのアクセントは、標準語とは違うようですし、「あずましい」「お米をうるかす」「~べや」「~しょ」などなど、それなりに方言は存在します(大学時代に「お米をうるかす」が方言と知り、大きなショックを受けました)。
「オルガン」とか「コーヒー」の発音は、東京に出てきて、どうやら標準語っぽくなったようですし、もともと「~べや」は使わないし(女の子は使ってはいけないと親に言われて育った)、「~しょ」も実家に帰らないとほぼ出ません。
が、どうしても「手袋をはく」だけは、直らないのです。今も直りません。
で、少年審判でも、つい「手袋をはく」と言っちまったわけです。

調書にどのように書かれているか、すごく気になりました。
調書が上がってきて、T先生の事務所でコピーしたものをいただきました。

あなたはそのとき、手袋をはいたのですね

などと、ばっちり書かれていました(注:再現は正確ではありません)。当たり前の話ですが…

自分、全く気が付いてませんでしたが、リアルタイムで聞いていた審判出席者全員、結構驚いていたのかもしれない…さすがに意味が分からない…ということはなかっただろうけど…
「付添人、それは手袋をしていたのか、という質問の意味ですね?」くらい言ってくれてもよかっただろう、審判官!!などと、多少思ったりもしました。

このことがあったからといって、この後北海道弁を必死で直そうとしたかというと、そんなことは全くありませんし、さっきも書いた通り、いまだに「手袋をはく」は普段は言いまくっています。
ただ、法廷技術の仕事をやらせてもらうようになって、法廷で使う言葉にはかなり神経を使うようになりました。そのため、方言も含めて聞いてるほうが「?」になる言葉がないか、尋問や冒頭陳述、最終弁論はチェックするようになりましたが…
「手袋をはく」とはもう法廷では言わずに済むはずです…

5件やった少年事件は、どれも「すんなり」というものではなく、それなりにそれなりのドラマがあったものばかりなのですが、なぜか、少年事件で思い出すことといえば、初めての少年事件の中の、このしょーもない「手袋をはく」事件なのです。

そういえば、いまだに最初に担当した刑事事件の顛末や依頼者の名前も憶えています。
民事(という家事か)事件も憶えています(相続放棄)。
それだけ弁護士にとって最初にやった事件、というのはインパクトが強いのかもしれません。
「初頭効果」ってやつ、なのでしょう、きっと。






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by terarinterarin | 2014-11-06 01:13 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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