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春が近づいてきた、と思いきや、急に気温が下がったりして、とかく天候が不安定な季節です。
昨日まで数日滞在していた広島も、気温が低い日が続いていました。

さて、ここずっと、わりと同業者向きの内向きな投稿が続いていました。
久々に、主に同業者以外の方に向けたことを書こうかな、と思っております。

最近、弁護士のニッチ化、あるいは「ニッチ化していると見る向き」が進行していて、「先生のご専門はなんですか」なんて法曹関係者以外の初対面の方に聞かれることもボチボチ出てきました。
個人的には、真の「ニッチ化」なんて別にそれほど進んじゃいないと思っていますし、「あたしゃーマチ弁でなんでもやります」という弁護士でも、やっぱり「強い分野」「弱い分野」を持っているものだと思います。「ニッチ化」なんて、多くの場合、相対的なものでしかない。

そして、そんななかで、離婚事件と刑事事件については、弁護士の仕事の基本となんとなく位置づけられている、というか、「誰でもできる仕事」みたいな暗黙の了解が同業者の中にあります。実際、この2種類の事件については、実に様々な弁護士が依頼を受けて対応している、という現実があるようです。
これってどうしてなんだろう…と思うのですが、おそらく「お金になりにくい仕事」だから、というのが理由のように思えるのです。

刑事事件のほとんどはいわゆる「国選事件」。被疑者被告人に弁護士に依頼するだけの経済力がないことがほとんどであり、国に弁護士費用を払ってもらうしかない。
そして、国選の弁護士費用は非常に安い(と考えられていたといった方がいいかもしれません。最近の弁護士の収入感からすると、今はそうでもないかもしれない)。
そのため、その昔(といっても、わりかし、つい最近までだよな)、国選はやりたがる人があまりいなくて、「とりあえず人員確保」が目的とされていました。
最近でこそ、多くの弁護士会で、国選事件は貴重な収入源として「奪い合い」の状況になっていますが、この昔の名残からなのか、裁判員裁判対象事件はちょっと置いておくとして、技量の問題は脇に置かれて「弁護士だったら誰でもできる仕事」と認識している弁護士が非常に多いように思います。

離婚の方はよくわからないのですが、想像するに刑事事件と似た理由なのかなと。
離婚の依頼者(特に女性)は、何十万も弁護士に払えるお金を持っている人は少ない。そうすると、「民事法律扶助」(現在は法テラスが利用していましたが、かつては、各地域の民事法律扶助協会が担当していた)を利用して事件を受けざるを得ない。
民事法律扶助の弁護士費用は非常に安い(と考えられていた。このような表現の理由は先に同じ)。そのため、やりたがる人があまりいなくて、やってくれる人確保が目的とされ、その名残で「誰でもできる仕事」と認識されている…(これ、違う、という人がいたら、ご指摘ください)。

しかし、個人的に、離婚と刑事事件は、実に難しい、大変な仕事だと思っています。
刑事事件についてみてみると、第一の目標が早期釈放である場合、短時間で書面を作成し、裁判所に提出するというところまでもっていかねばならないということになります(勾留されないようにする、勾留を争うなどのケースですね)。被疑者と接見して、ご家族や会社の方と面談して、付属の資料を入手して書面を作成して…時間との戦いになります。
容疑を否認して争うということになった場合、早期釈放されないこともありえます(この点については、ケースに寄ります。後述しますが)。その場合、次に何をすべきか、取り調べにどのように対応するかということも問題となります。黙秘させるにせよ、話をさせるにせよ、認めるにせよ、否認を貫くにせよ、それぞれのメリット・デメリットを説明しなければなりません。つまり、メリット・デメリットを説明できるだけの経験と知識、理解が必要ということになります。
それ以外にも示談交渉の技術、釈放後の身元引受先の調整、本人とどうやって事件と向かい合ってもらうか、それをどうやって「証拠化」するか、などなど。やらなければならないこと、考えなければならないことがたくさんあります。

離婚事件についても、希望を聞いて、単に「離婚調停」(正しくは夫婦関係調整調停)を起こせばいいってもんじゃない。依頼者が主張する事実が裁判上の離婚原因に該当するのか、該当するとしてどんなものを証拠にできるのか、相手が争ってくるとしたらどの点なのか、裁判上の離婚原因がないとしても交渉次第で離婚が可能なのか、可能だとしたら、最終的にどこを譲歩すべきなのか…などなど、見通しと戦略を立てるのが非常に難しい。また、家事事件手続自体が一般の方からすると若干複雑な側面もあるため、説明に時間がかかるという問題があります。

が、この2つの事件、弁護士が「は?」「え?」という対応をしていることが少なくないように思えてなりません。

例えば、刑事事件。かつて担当した窃盗の控訴審。初犯で事件の内容からすると、謝罪をして釈放後の生活のプランさえ立てられれば執行猶予にできた事例。なのに、一審の弁護人は「法廷で反省の弁をきちんと述べられるかが勝負」といって、謝罪文も書かせず釈放後の環境の調整も一切やっていなかった。その結果実刑判決を食らってしまったということがありました。これなんぞ、国選はボランティアだからその程度のことをすればいいでしょ、という昔の国選感覚そのままの対応です。
逆に当番弁護で呼ばれて接見したら、その前に親が送ってきた弁護士が先に来ていて、十分示談交渉によって不起訴や罪名を下げてもらって罰金にできる可能性がある事件なのに、「もう起訴されて裁判員裁判確実。刑務所に行くより仕方ない」と説明して帰って行ったなんとことがあったり…しかも、取り調べのアドバイスは一切なし(していたとしても本人が理解できるようにしていない、ということでしょう)。
控訴審の弁護を担当すると、一審の先生が数回しか接見に来てくれなかったという話もよく聞きました。

離婚についても、弁護士のびっくり対応は結構聞きます。どう考えても現時点で裁判上の離婚原因が見当たらないのに、電話相談した弁護士から「裁判上の離婚原因があるので、調停はとっとと不成立にして訴訟提起する方向で」と説明されていたり。あるいは、これもやはり私の前に相談を受けた弁護士から、風俗関係での勤務歴から「親権はあきらめろ」と説明を受けていたり。恋愛サイトを利用した詐欺まがいの手法にひっかかって結婚してしまった若い女の子を怒鳴りつけて、相談から追い返したおばさん弁護士とか。

そろいもそろって、ありえません。

相談の電話をかけたり、人づてに弁護士を探して連絡をとったりしても、このふたつについて「できない」「うちはやっていない」などという弁護士は、ほとんどいないんじゃないかと思います(注:刑事事件の裁判員対象事件については除きます)。
が、「できますよ」「やりますよ」と言ってくれたからと言って、安心してはいけないのです。

じゃ、夫が痴漢で捕まった、夫と離婚したいというときに、どんな弁護士に依頼すればいいのか、その見極めのポイントはどこなのか?ということが問題となります。

まず、個人的には、電話相談であれ、面談の相談であれ、「話を聞かない弁護士」はまず間違いなくやめたほうがいいと考えています。刑事事件とか離婚事件は、どんな事情があるか、隠されているかによって、とるべき対応が全然違ってきます。
もちろん、あんまり話が飛んだり横道にそれたりする場合には弁護士が遮ることも仕方ありませんが、まず、話を中断させるのは言語道断。また一通り説明を聞いた後で、弁護士の方から事情を聞く質問がない場合も要注意ではないかと思います。

次に、裁判所や検察庁の運用の傾向がどうなっているのかということを語れない弁護士も要注意だと思います。
これが語れないということは、今後の見通しが的確に立てられないということを意味しているからです。
特に痴漢のケースですが、少なくとも、最近の東京地裁では、痴漢をしたとして迷惑防止条例違反で逮捕されたとしても、勤務先がしっかりしていて家族もいるようなケースでは、勾留されない場合がかなり多いようです(否認を含む)。そのような運用も説明せずに、勾留を争うために高額な弁護士費用を請求されたら、一度立ち止まって考えてもらった方がいいように思います。

また、今後の進行について、いくつかのパターンがありうることを説明できない弁護士も要注意だと思います。
例えば「貸したお金を返してほしい」という相談の場合、「貸した」「返してない」「相手は返せる」という証拠があるかどうかで、返してもらえるかどうかという見通しがある程度立てられますが、刑事事件や離婚事件では、ほとんどの場合そういうわけにはいきません。
例えば、刑事事件であれば、示談ができるかどうかは被害者の意向次第。そうであれば、不起訴で終わるかどうかもわからない。
離婚事件では、こちらが夫のDVの主張をしても、夫がどういう反応をしてくるかわからない。財産分与してもらおうとしても、気づかぬ間に隠されてしまっている可能性もある。証拠の中身次第では、裁判上の離婚原因があると認定してもらえるか、財産分与でお金がとれるか、全く変わってしまうわけです。

タイムチャージ制をとっているケースも場合によっては要注意です。特に家事事件の場合、調停でタイムチャージ制にされてしまって、お金が払えないばかりに、ある調停の期日には代理人なしで出頭せざるを得なかったなどという話も聞いたことがあります。
このようなシステムをとっていると、一見明朗会計で良心的であるようにも思えるのですが、長引く事例では、とんでもない金額に費用がかさんでいることがあります。特に離婚事件のケースでは、調停が当初の想定よりもかなり回数を重ねることになる場合もあるので、注意が必要です。

「離婚専門」「刑事専門」と謳っていても、油断は禁物です(このように謳っている事務所の中にも素晴らしい事務所はもちろん存在しますが)。

依頼した弁護士が「こりゃあかん」ということに気づいたら、弁護士を変えましょう。
タイミングによっては、既に希望した結果を得るには遅いというケースもありますが、「あかん」弁護士に任せっぱなしにしているより、よりましな結果に導くことが可能ということもありえます。
そのためには、セカンドオピニオン的な相談を受けることも場合によっては考えてもらいたいものです。

なお、この記事ですが、「テラバヤシは離婚も刑事も100パーセントのできる弁護士。なので、どうぞともえ法律事務所へ」なんて宣伝するものではありません。
首都圏あたりでは値崩れ?しているとはいえ、一般の方にとっては、弁護士費用とはお高いものです。
大切なお金をどぶに捨てることにならないようにするために、いざというときに、ここに書いたことを思い出していただきたい。
そう願って書きました。

というわけで、本日はこの辺で。




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by terarinterarin | 2015-03-08 17:30 | Comments(1)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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