事件を起こした精神的にマズい人の、その後。
2014年 05月 25日
AKB48握手会で刃物男乱入のニュース。
衝撃的だったのは、人気メンバーの川栄李奈ちゃんと入山杏奈ちゃんが負傷したこと。
握手会って、考えてみたら危険極まりないイベントですよね。
今後、実施されるのかな。これ、AKBの伝統的な目玉企画ですけど・・・
今日は、事件を起こしちゃった人がその後どうなるのか、ということをお話しします。
この手の事件や通り魔事件などなど、「えっ」という状況で、人を傷つけたり殺そうとしたりする人は、一過性にせよ継続的なものにせよ、精神的な問題を抱えていることが少なくありません。
私自身も今まで刑事事件を割にたくさんやってきましたが、この手の事件の被疑者被告人の方々は、統合失調症とか、人格障害とか、その他もろもろの精神的問題を持っている人ばかりだったと言っても過言ではありません。
これは、精神科の医師に聞いたことでもあるし、自分の経験からもそうだと思うのですが、病気の重さと事件を起こすかどうか、どの程度の事件を起こすかということには、特に関連性はありません。
ごくごく軽い問題しかない人が、世間をにぎわすとんでもない事件を起こすこともあれば、普通に生きていくのがかなりしんどそうな重い重い疾患の人が起こすのが、かなりしょぼい事件ということもあります。
ここは、法律家としては、突き詰めても仕方ない問題かな、と思っています。
「事件を起こした人に精神疾患がある」となると、「責任能力」とか「精神鑑定」という言葉を思い浮かべる人も多いことでしょう。
まず、実際の裁判で、被告人の責任能力が争われることは、実は数の上ではそれほどないですし、まして「責任能力がない」と判断されて、その人が無罪になることは極めてまれです。
それは、責任能力がかなり危うい人については、逮捕されてから裁判にかけられ、判決を受けるという刑事手続のルートのどこかで、そのルートから外れうる仕組みがあるからです。
まず、前提として、事件の態様や事件と起こした本人の動機が突飛な場合、捜査機関は、その人に精神疾患がないかどうかを疑います。病歴が出てくれば、かかっていた病院に照会をかけますし、場合によっては診療録を取り寄せたりもします。そして、必要と判断した場合には、精神鑑定を行います。
この精神鑑定は、実は「簡易鑑定」と呼ばれるものと「起訴前本鑑定」と呼ばれるものに分かれます。
「簡易鑑定」は、読んで字のごとく、ごくごく簡単な鑑定で、多くの場合、各地の検察庁のお抱えの精神科の先生が1~2時間程度の問診と、検察官から渡された資料を基に責任能力の有無を判断します。
軽微な事件や、裁判員裁判対象の重たい事件でも「まあ、まず責任能力には問題がないだろう。だけど念のために」という場合に用いられることが多いという印象です。
この結果、責任能力に問題ありとなると、軽微な事件の場合には、その人は強制入院の一種「措置入院」という処分を下され、精神科に強制入院させられる場合があります。
理論的には、責任能力の問題だけではなく、その時点で「他害の恐れ」つまり他人に危害を与える恐れがある場合に、措置入院させられることになります。
重たい事件で簡易鑑定を実施した結果、責任能力に問題があるかもしれないなんて結論になったら、さらに詳細な鑑定を行うために、「起訴前本鑑定」を検察官の判断で行うことになるわけです。重たい事件の場合、検察官が病歴から必要と判断すれば、いきなり起訴前本鑑定を行うことも結構あります。
そして、起訴前本鑑定で責任能力がないなんて結果が出たら、検察官は、ほぼ100パーセント、その犯人を起訴しません。
殺人や現住建造物放火(人が現住している建物に対する放火)など、一定以上の重たい犯罪の場合には、不起訴処分とした後、医療観察法という法律に基づいて強制入院させるために、裁判所にその判断を求める申立を行います(まれに、起訴されて無罪判決が出た後にこの申し立てがされる場合もあります)。これが認められれば、犯人は入院させられ、手厚い体制で治療が施されることになります。
で、「措置入院」と「医療観察法に基づく入院」、どこか違うかというと、入院させることができる期間に大きな違いがあります。
措置入院は「他害」の危険がなくなれば、退院させなければなりません。治療が目的ではないのです。
ですから、極端な話、翌日に退院、なんてこともあり得ます(実際には、その後、家族や市町村長の同意によって医療保護入院というものを用いて引き延ばすことはできます)。
これに対して医療観察法に基づく入院は、治療が目的なので、入院期間は相当長期に及びます。
精神的に問題がある人のストーカーなんかの場合、逮捕しても責任能力がなければ措置入院、大人しくなったので退院させたら、またやっちゃって、また入院、なんてことの繰り返しになるわけで、ストーカーされている人にとっては、気の休まる時が一時だけ、という気の毒なことになってしまいます。
でも、日本の法律がこうなってしまっている以上、どうしようもない。
法律家でこういうことを言うと、「人権軽視!!」とかって怒られちゃうかもしれませんが、個人的には、医療観察法的な制度をもっと拡大することが必要なんじゃないかと思っています。要は、「病気がもとで他人に危害を加えそうな人は、徹底的に治療する」という制度を作るということです。
私が子供のころの日本では、こういう他人に危害を加えちゃいそうな人は、結構長いこと精神科に入院させられることができたのですが、人権侵害がどうだとかいう批判が高まったこととか、病院の過剰収容て国家予算が圧迫されただとか、あと医師不足だとか、その辺の理由で、おそらく「よっぽどまずい人じゃない限り社会内で処遇」という現行の法制度に改編されてしまったわけです。
で、そうしたら、通り魔だとか、今回みたいな事件だとかが頻発するようになってしまった。
ドイツなんかは、他害の恐れがある人については、病名が付かなくても隔離施設に入れられる制度があるそうですが、人権侵害云々という批判はあまり受けてないらしいです。
それは、施設内の処遇について徹底的なチェックを入れて、入院している人に対して不当な人権侵害が生じるのを予防しているからのようです。
要はバランスの問題だと思うのです。
人権人権って、そりゃ病気の人にも人権はありますが、普通に生きている一般人にも人権はあるわけで、病気の人の人権を守る結果、他の人々が危険にさらされるようなことになったら、元も子もない。
それに、その病気の人だって、好きで病気になったわけではなく、事件を繰り返して病院とシャバ、刑務所とシャバを行き来するだけの人生にさせられるのは、運命という一言で片づけるには、あまりにむごい。
人を傷つけないようにするために隔離して治療はするけれども、それ以外に不要な人権侵害はしない。
そういう制度を早いとこ立ち上げないと、この日本って国は、いつどこでどんなことに巻き込まれるか、どんなことをしでかしてしまうかわからない、悲惨な国に成り下がってしまう気がしてならんのです。
以前担当していた人が「窃盗→不起訴→措置入院」で、後任者より相談があったので、読ませていただきました。
簡潔にまとめて書かれていて、非常に参考になりました。
ありがとうございます。
冤罪や過失はきっちり話をしたらいい。 故意 の殺人に対しては死刑は勿体ないので福利厚生なしの角膜没収ぐらいが妥当
被害者にとって加害者の都合とか加害者の未来とか関係ない。
精神鑑定無罪とかやってそこまで国益になるの?単純直接民主主義をやったら死刑になるような人は死刑にすべき
私も心神喪失状態だったからという理由で無罪となったり減刑となったりする日本の司法制度に疑問を持っています。
心神喪失状態であろうとなかろうと、犯した罪は罪、被害者も存在する。
被害者や場合によっては遺族からすると納得いかないのではないでしょうか。

