弁護士に頼まないでやってみよう!①相続放棄

弁護士業界の首を絞めかねない禁断のネタかもしれません。

初ブログのときも書きましたが、私は、元々法テラスというところがやっている法律事務所にいました。

この法律事務所は、経済的に苦しい人などの民事事件や家事事件、国選の刑事事件を専門的に受けるところでした。

そんなわけで、私の場合、契約を結んだり相談を受けたりするときに、今でも、「できるだけ依頼者の経済的負担を減らせれば」と考えてしまいがちです。

もちろん、頼まれる内容によっては、ある程度の着手金や報酬金をいただくことにはなります。

ただ、最近の家庭裁判所や簡易裁判所は、一般の方にとても親切で、受付で「こういう申立をしたい」と告げると、申立書の書式をくれたり、必要な添付書類を懇切丁寧に教えてくれちゃったりします。
また、どう考えても弁護士に頼んだら、費用倒れになってしまう事件というのもあります。

で、私の場合、そういう事件については、相談を受けた場合、「ご自身でもできると思いますよ」とか「あなたが却って損をするので勧められない」と率直に伝えます。

その「ご自身でもできると思いますよ」という事件の、割と代表的な例が「相続放棄」です。

相続放棄は、読んで字のごとく、亡くなった方の相続を相続人が放棄するという制度です。被相続人が亡くなったことを知ってから、原則として2か月以内に家庭裁判所に対して申立ることによってすることができます(この期間は伸ばしてもらうこともできます)。

例えば、亡くなった人が借金まみれだった場合、普通に相続すると、相続人はこの借金を払う義務も相続分に応じて負うことになってしまいます。そういうことを回避するために主に用いられます(注:生命保険金は相続財産に該当しないので、相続放棄をしても受け取ることができます)。

管轄の裁判所は、被相続人の最後の住所地です。ぺら2枚程度の申立書と、関係図、住民票、それから戸籍謄本を提出することによって相続放棄ができます。
申立書も、難しい法律用語でいろいろ書く必要はありません。記載例を見れば、大体のみなさんが作成できる程度の書面です。

戸籍謄本については、亡くなった方と相続人が「つながる」ことがわかることが必要です。
ですから、例えば、ご主人が亡くなって奥様だけが相続人の場合とか、まだ未婚で、分籍などを行っていない子の場合は、戸籍謄本(全部事項記載証明書というもの)1通出せばよいので、資料集めもとても簡単です。

結婚して、別戸籍になった人の場合には、自分の現在の戸籍と亡くなった人の戸籍を提出することが必要になります。

通常は、申立書1通と戸籍謄本や住民票数通を出せば足りますし、手数料もお安い、しかも、管轄裁判所が遠隔地でも郵送での申し立てが可能。
申立書は裁判所のホームページからダウンロードできますし、最寄りの家庭裁判所からもらってきたものを使用してもOKです。

基本的には、十分弁護士なしでできる手続です。
ですから、もし、こういう事態に陥った場合でも、まずは自分でできないか考えてみることをお勧めしたいのです。

ただ、では、私が今までに一度も相続放棄の事件を受けたことがないかというとそんなことはありません。
何回か事件を受けたことがあります。
そこで、弁護士に相続放棄を依頼したほうがいいだろうと思われるいくつかのケースを紹介したいと思います。

まず1つ目は、亡くなった方の資産状況がわからず調査が必要な場合です。
このような場合には、調査をしながら、期間延長の申請をしたりなど、配慮すべきことが増えてくるので、弁護士に依頼したほうがよいと思われます。

また、訳あって被相続人が亡くなってから2か月以上経過した時点で、その人が亡くなったことを知った、あるいは相続放棄の手続をしなければならなくなったという場合が挙げられます。
この場合は、遅くなった申立を正当化するような資料の提出がある程度必要になるので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

さらに、結婚や離婚、養子縁組や離縁を繰り返したために、戸籍が何回も新たに作成され、被相続人の戸籍に「たどりつく」までにかなり戸籍を手繰り寄せる必要がある場合、が挙げられます。

弁護士は、事件処理のために正当な理由がある場合には、対象者の戸籍や住民票を取得することができます(ただ、個人情報の不当な漏えいを防ぐために、取得するための手続は昔に比べてかなり厳しくなりました)。
たくさんの戸籍を取得するためには、一般の方は基本的にその役所に出向くことになるでしょうし、郵便で請求する場合にも的確に必要なものをとるのは難しいものです(実は必要な戸籍をとるには、ある程度のテクが必要なことがあります)。
ですから、こういう場合にも弁護士を頼ってもらった方がいいと思います。

身内の方が亡くなられたすぐあとは、悲しみも癒えないので、なかなか必要な法的手続を迅速に取ろうという気持ちにはなれないかもしれません。
しかし、ある程度、喪の儀式が済んだら、まずは家庭裁判所に相談しに行ってみてください。
そして、自分自身でできるかどうか不安だったら、受付の職員に「弁護士さんにお願いしたほうがいいんでしょうか」などと聞いてみてください。
最近の裁判所の職員の方は(期待も込めて)来所する皆さんに優しい(はず)ですから、きっと、適切なアドバイスをしてくれることと思います。

ってことで、全国の家裁の受付のみなさん、よろしくお願いします。


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by terarinterarin | 2014-05-27 23:17 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。ウェブサイト https://attorneyterabayashi.simdif.com  「弁護士テラバヤシ」でツイッターもやっています。


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