お金を貸す、ということ。
2014年 05月 30日
息子に生活費が足りないと言われて合計で300万円も渡したのに、返してくれと言ったら、「なんのこと?」としらを切られてしまった。
「どうすればいいですか?」
「取り返したいんですけど」
などという、「貸した金返してほしい」という相談を、よく受けます。
その時に、絶対に聞くのが、「借用書はありますか?」です。
8割方、答はNOです。
次に聞くのが、大体、「じゃ、あなたがお金を貸したことやその金額、返さなきゃならないことを相手が認めていることがわかる記録はありますか?メールとか(注:最近は、これにLINEなどのSNSも含まれます)でもいいんですけど…」
これも、NOのことが多い。
さらに、「じゃ、お金貸すときに銀行から引き落としたりしましたか?引き落としの記録があるといいんですけど…」と聞くと、「手持ちのを貸しちゃったしなあ…」とか「何日か前におろしたお金の中から貸したので…」という答が、案外多い。
こうなると、閑話休題です。
相手がしらばっくれてしまったら、それ以上、裁判を起こしたりして返してもらうことはできません。
裁判を起こして相手から貸したお金を取り立てようとする場合、「相手に○○円を○年○月○日に貸した」「そのときに、相手は○年○月○日に返すと約束した」「相手からはまだ返してもらっていない」という事情は、全部、訴えた側が証拠を出して証明しなければなりません。
そして、その証拠というのは、貸した側の証言だけでは全然足りません。
一番有益な証拠は借用書です。
借用書がない場合には、相手が、お金を借りたこと返す日時を約束したことがわかる他の資料が次に有益です(と思います)。先ほど挙げたメールは、その例です。
それもない場合には、引き落としの記録、日記、メモ(日付がないとアウトですが)を駆使します。
大金を貸したのに返してもらえないということは、よくよくありがちなことです。
個人的には、友人知人に簡単に金を借りようとする人は、友達を大切にしないよくない人だと思っている(もちろん背に腹が代えられずやむを得ずそうしている人がいることも認めますが)のですが、もし、頼まれた時に「お金を貸す」という選択をする場合、「あげたもの」と割り切るか、割り切れない場合には、「借用書」をとってください。
そして、その借用書には、貸したお金の金額、貸した日付、「確かに借りました」というセリフ、できれば返済予定日を、相手に書いてもらってください。
それが最終的に自分を守ってくれることになります。
ただ、実際には悲しい現実が待っています。
友達や親に大金を借りる人は、そもそもお金がない経済的に苦しい人だったりして、その後、劇的に経済力が回復するということもまずありません。
そのため、最終的には、裁判を起こす費用の損を被るだけという結末が待っている場合もあります。
弁護士としては、借用書があるとしても、貸した状況等を聞いたうえで「回収は難しいでしょう。費用倒れになりますよ」と宣告することも少なくありません。
実際、「どうしても」と言われて、返済を要求する内容証明郵便を送ったところ、間髪入れずに「自己破産をすることになりました」という連絡が、相手の代理人から届いたりしたこともあります。
やっぱり、簡単に他人にお金を貸すのは考えもの、なのです。

