仕事と受験と法律家。

以前にも書きましたが、テラバヤシは、受験生活の傍ら、働いておりました。

働いていたのは、今はなき某資格試験予備校の札幌校でした。
公務員受験講座の法律科目や論作文科目の非常勤講師をしておりました。

私がこの仕事をしていた頃は、かなりな不景気で(いや、今もさほどよくはないですが)、公務員の給与もまだそれほど削減されておらず、公務員試験の人気が高い時代でした。
1年浪人して受験続けるなんて当たり前、2浪、3浪という人もいました。

非常勤講師とはいえ、一番忙しい11月から4月までは、毎週4~5コマくらいの授業を持っておりました。
一番稼いでいたときは、修習生の時の給与よりも収入が多くありました。

旧司法試験は5月の第2日曜日(つまり母の日)にマークシート方式の択一式試験がありました。
択一式が苦手だった私は、わがままを言って試験前1週間のみお休みさせてもらいました。
公務員試験も間近に迫った大切な時期だったので、翌日にはまたすぐ仕事に出ました。

論文式試験は、7月の第3土曜日と日曜日に行われました。
この時期、地方の公務員試験は一次試験の合格発表が終わり、二次試験の論文や面接の対策が始まる頃でした。
いつもは一次試験の科目を教えている講師も、多くは、模擬面接の練習に駆り出されていました。

確か最終合格した年は、自分の論文試験の3日前に、公務員試験の2次試験対策の講義をしていました。
そして、論文試験が終わった翌日からは、模擬面接官の仕事が朝から晩まで連日びっちり入るという生活でした(あんまり模擬面接をビシバシやりすぎて、2ちゃんねるの「北海道公務員試験スレ」に「○○(学校名)のT林先生にボコボコにされたよ」と書き込みがされたこともありました)。

ここの予備校では8年間お世話になりました。
このうち5、6年は、今お話ししたような生活を送っていました。

こう書くと「仕事してなかったら、もっと早く受かっていたかもしれないね」などと思われる方もいるかもしれません。
実際、受験中も「仕事やめたらどうだ」と言われたことがあります。

しかし、私はそうは思っていません。

仮に仕事をせずに受験だけの生活を送っていたとしたら、私は最初に決めた「10年がんばろう」という信念を途中で放棄して、結局最終合格できなかっただろうと思います。

そして、仮に仕事をしていたために合格が遅れたのだとしても、それを補ってあまりあるものを得た、と思っています。

受験時代、仕事の合間に、控え室や近所のスタバで勉強しなければならないこともありました。
隙間時間を使うこと、「勉強なんて机と筆記具があれば出来る」ということを覚えました。いつでもどこでも勉強できるようになりました。

働いて、家にお金を入れて、税金も自分で払う(白色申告していました)という生活を続けて、自分は、ただの「ゴクツブシ」ではないと思えるようになりました。

社会との接点を持っている、社会に参加しているという意識を持つことが出来るようになりました。精神が安定しました。

それまで理解できなかった条文や判例の真意を、「働く」ということを通じて理解できるようになったこともありました。

講師の仕事は、実は教壇を降りてからが勝負でした。
質問に来た受講生にいかにわかりやすく解説するか、つまり、その人が本質的にどこで引っかかっているのか、理解することが必要でした。
おかげで人の話を聞く癖がつきました。

弁護士になって新人の頃、法律相談や接見をするときに、この癖が技術のなさをかなり補ってくれました。

10年の受験生活は、総括すると、落ち込んだりつらい気持ちになったりすることの方が多かったように思います。
泣きながら判例を読み続ける、なんていうこともありました。

しかし、それでも最後まで続けてこられたのは、仕事をしていたからだと思っています。

今は空前の資格試験ブームで、働きながらなにがしかの試験を受験される方も少なくない世の中です。
そして、そういう「受験生」の多くは、私のように時間の融通がある程度利く恵まれた仕事ではなく、ウィークデーをフルタイムで働く仕事についている方がほとんどです。

かつては、司法試験受験生の中にも、少数ながら、公務員をしながら、あるいは会社員をしながら受験していた方もいました(ついでに、同じクラスにはパチプロをしながら受験をしていた人もいました)。

現代の「学ぶサラリーマンやOL」のみなさんに心から敬意を表するとともに、司法試験ももう一度、「働きながら受験したい人」がそうできる資格試験に戻って欲しいと思うのです(注:少数ながら、夜間のロースクールというのもあるので、そちらに通いながら働くという方もいらっしゃるでしょう。また、いわゆる予備試験の受験者にはこのような人もいると思います)。

法律家は、いろんな経験をしておくことに越したことはないのですから。
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by terarinterarin | 2014-06-08 00:26 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。ウェブサイト https://attorneyterabayashi.simdif.com  「弁護士テラバヤシ」でツイッターもやっています。


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