家族間紛争は、戦いなのだ。

弁護士テラバヤシというと、良く知る方のイメージとしては、「刑事事件を一杯やっていて、警察官とか検事とか、裁判所とかと戦っている」というところだと思います。
が、実は、現在手持ちの刑事事件はゼロ件です。
独立してから、圧倒的に家事事件が多くなりました。
そして、家事に含まれない、親子間、家族間、男女間の紛争(刑事事件に付随するものも含みますが)のご依頼も、結構多い状況です。

巷では、離婚調停の申し立ては圧倒的に女性からの方が多い、女性の気持ちを分かってくれるのは女性、だから女性弁護士は家事事件(離婚事件)が多いというのが定説になっているようですが、実際にこの手の相談を受けていると、前者についてははなはだ疑問ですし、後者についても、まあ間違いではないんだろうけど、実際どうなんだろうなと?がつく状況です。
実際、男性からの離婚のご相談は、当事務所でも結構多いです。
女性側に男性の弁護士が付くことも、少なくないなという印象です。

「家事事件なんかでも戦わなあかん場面が結構多い」なんていうと、おそらく多くの方は、女性が男性からDVを受けた案件なんかを想像されると思います。
が、実際には、そういう事件に限られず、家庭内などの紛争なんかですと、特に初動の段階では、相手に対して、がっつり強く出なくちゃいけない場面が多いといえます。
「女性側」を受けている場合に限られません。
「男性側」を受けている場合でも、同じです。

守秘義務の問題があるので、あまり細かいことは言えませんが、「父だ」「母だ」「子供だ」「元彼女」「元彼氏」という立場を利用して、不当な要求を、それはそれは執拗に繰り返すケースの相談が、開業以来、ほぼ途切れることなくコンスタントに持ち込まれます。
もちろん「不当」と言っているわけですから、それは法的に認められる養育費や扶養料等の請求ではなく、どう考えてもいちゃもんだろうとしか思えないような事情を盾にとって行う「慰謝料」請求や、すべき義務のないことについて「こうしろああしろ」という要求なわけです。

テラバヤシは、なぜか以前から、金銭の不当要求の相談を受けることが多くて、結構な件数対応してきたのですが、肉親とか男女関係が絡まない不当要求については、「私が受任しました。あなたの要求は法的根拠のない請求ですので、応じられません。これ以上続けるようなら法的措置を採るからね」みたいな内容の書面を送付すれば、まあ、8割方は終了します(少なくとも私が経験してきたケースはそうです、という趣旨です。民暴関係の事件なんかだと、こういうわけにはいかないでしょう)。

電話で「どんな手使ってでもむしりとってやるからなあ」とたんか切られたり、「不当請求だあ?夕方までに資料FAXするから、その後電話に出ろよ!!」などと怒鳴りつけられたケースでも、結局、そこを通過すれば何もなく、ジ・エンドという状況でした(後者の件なんて、「ああ、わかりましたあ。お待ちしてますぅ」と言って、実際ずっと待っていたのに、結局何も来なかった。来ないのわかってましたけど)。

が、家庭が絡む紛争や、男女関係が絡む紛争は、こうはいきません。
先に挙げたような書面を送っても、嫌がらせが続いたり、矛先がこっちに向いて、とんでもない件数のメールが送られてきたりするケースが、割合的には、ぐっと多くなります。
もちろん、特に家事事件を中心とする家族間の紛争に関しては、こちらの立場からすると「不当な請求」でも、あちらの立場からすると一応理由のある請求であることもなくはない。
ですから、そういう事情が判明すれば、ある程度交渉に応じなきゃいけないわけで、「振り上げたこぶしをどこでおろすか」というタイミングを見計らうことも必要になってきます。

が、そういう「一応の理由」も見いだせないにもかかわらず、「父だ」「母だ」「子供だ」などなどの立場のみを根拠にして、あたかもそれが伝家の宝刀であるかのように自分の請求は正当なのだ、と言い張られることも少なくありません。

個人的に、これは一種の精神的暴力であり、ある種の脅迫・恐喝行為だと考えています。

血縁関係や交際していたことは、何をどうあがいても消すことができない事情です。
特に血縁関係については、一生ついて回るもの。
ある意味、絶対的なものです。
その切っても切れない絶対的な事実を振りかざして、「だから、あなたは私を無視できないでしょ?お金払いなさいよ。言うこと聞きなさいよ」というのは、人の弱みを握って「ゆする」行為の際たるもの。

以前、私が受任した事件で、当事者が、家族関係にある相手方から法的根拠のない多額の金銭の請求を脅し半分で受けているものがありました。
当事者の恐怖心や意思を考えると、相手方との間で以前のような関係に修復できる余地などはなく(脅迫の内容についてはメールで十分に立証可能)、その点も伝えたのに、相手の代理人から「縁は絶対に切れないんだから、今後、関係を修復して円満にしていけるような解決を目指しましょうよ」なんて言われた挙句、慰謝料名目でびっくりするような金額をこちらが支払う内容の和解提案を受けたことがありました。

弁護士ですら、そうなのです。
肉親である、家族であるなどという事情が、不当な請求の温床になり、人を追い詰めるということに気が付かずに、「ね。これからもかかわらきゃいけないんだから修復しようよ」なんて、いとも簡単に言っちゃったりするのです、何の悪意もなく。

男女間の不当請求なんかでも、警察に相談に行ったら「付き合ってたんだから請求に理由がないなんて言えないよねえ」なんて言われて、状況が深刻なのに取り合ってもらえないという話はよく聞きます(「刑事ではできないから、弁護士さんに相談しましょう」すら言われないこともあるようです)。

確かに、病気とか死んだとか、相続なんかの場面で、家族である以上お呼びがかかったりすることもあるでしょう。
そういう場面になったらまた考えるとして、そこに至るまでの場面では、私は「絶対的に排除すべき関係・要求」というものがあると考えています。
明らかに一方的に追い詰められているにもかかわらず、肉親だからという理由だけで請求を一定程度飲むとか、関係を強要するといったことがあってはなりません。
肉親であるとか、男女の関係にあったということは、何かを義務付けられる「絶対的な」価値ではありません。

思い返してみると、刑事事件で検事や裁判官、警察官と戦うよりも、家庭内の紛争や男女間の紛争で相手方と戦う方が、根気もいるし、疲れるような気がします(いや、お前が刑事事件でそれだけ手え抜いてたんじゃないかと言われるとつらいのですが)。
「民事や家事は、要は交渉力」という価値観は正しいと思いますが、それだけでは、紛争を解決できないのもまた事実でしょう。
ガンガン戦うことが依頼者の利益のために必要な場合があるということは、刑事事件も民事事件も同じ、なのです。







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Commented by 回せません、押してみていいですか? at 2015-07-29 23:18 x
やるべきことが山ほどあるのにガンガン戦うファイトがイマイチ出ません。ファイティングスピリットが湧いてくる良い方法などありませんかね。
Commented by terarinterarin at 2015-08-02 16:42
> 回せません、押してみていいですか?さん

コメントありがとうございます。

私もどうにも疲れて何もしたくない時は時折ありますが、そういうときは、思い切ってさぼります。
散歩をしたり、寝てしまったり、好きな本を読んだり、おいしいものをだべたり。

忘れる時間を作るということも必要かもしれませんね。
Commented by プッシュ、プッシュ at 2015-08-05 23:41 x
思い切り、や忘れる時間を作る、など合理的で素敵です。洗練されたアイデアだと思いました。
さすが、一般に難しいと言われる関門をいくつもくぐってらっしゃる先生のお言葉には、すばらしい含蓄があります。思い切ってさぼる、は思いつきませんでした。(なんとなくさぼってしまいます。)
時間を経ないと客観視できないことの多いことはつねづね感じていますが、意図的に忘れる時間を作ろうなどはしていませんでした。(常に追われる環境で反省が浅くなり、かえって改善化も身につかない。)

ありがとうございます。先生がもし「戦う女のファイティングスピリット講座」を開催されるとき等には、是非私のこのコメントを紹介して用いて下さい。
(ー人ー)合掌(祈)~
by terarinterarin | 2015-07-26 19:08 | Comments(3)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。ウェブサイト https://attorneyterabayashi.simdif.com  「弁護士テラバヤシ」でツイッターもやっています。


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