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「おひとり様事務所」、定着?

夏休み真っ只中。今週からお盆も始まり、われらの業界もつかの間の「まったり」感を味わえるシーズンです。
とはいえ、テラバヤシは、毎年のことながら、13日から、日弁連3日間研修と東京三会2日間研修の講師のため、お盆は全く休めないのですが。ああ、ご先祖様、大変申し訳ございません…

6月から7月にかけて、色んな人とお話したり食事をしたりする機会が珍しく多々ありました。
で、東京あたりでは、テラバヤシのような「イソ弁もノキ弁もパートナーも事務員もいない」おひとり様事務所経営弁護士が、結構いるんだなあ、新たな事務所形態として実はもう定着しつつあるんだなあと感じるようになりました。
先日も、非常勤裁判官の関係で飲み会をした際に、その中のおひとりが「おひとり様事務所」だった。
法テラスの審査委員でご一緒した先生も、かつて「おひとり様事務所」だった。今は事務員を雇われているようですが。
で、人づてに、あの人もそう、この人もそう…みたいな話も舞い込んでくる。

1つのカテゴリーとして定着しつつある?「おひとり様事務所」ですが、「おひとり様」になる動機、「おひとり様事務所」をやることのスタンス、業務遂行方法等は、割に多様であるように思います。

動機としては、ザックリ言えば、ネガティブ方向とポジティブ方向に、わりに両極端に分かれるのかな、と思います。
ネガティブ方向というのは、言わずもがな。
新人さんで、入れてくれる事務所がない。当然、大規模にお金をかけるだけの資力もない。
とか、今の事務所にはもうどうにもいられない(ブラックとか、合わないとか、理由は様々)、資金もあんまりないけど、とりあえず出よう。引き受けてもないので、とりあえず一人で、みたいな感じなど。

ポジティブ方向は、これもまたザックリ分けると、「マイペース型」と「こころざし型」に分かれるかなあと思います。
事務所から事件を無茶振りされて、死にそうになりながら仕事するのはもういや。(弁護士をやっている以上、どうしても突然降ってわいてくる仕事というのはあるものですが)そんなにもうからなくていいから、自分のペースで仕事がしたい。事業規模もそれほど大きくしたくないから、人も雇いたくない、というパターン。
「こころざし型」は、自分がやりたいことに特化したいという思いで開く場合(そして、それを突き詰めると収益的にそれほど…な場合)。

テラバヤシのともえ法律事務所は、言っておきながら何なのですが、マイペースとこころざしを足して2で割ったような感じです。
元々規則正しい生活というのが苦手で、自分のペースで仕事したいな、と思ったのと、人に相談しにくい話をあんまり緊張しないでお話してもらえる事務所を作りたいなというのと、あと、ハクション大魔王よろしく「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」みたいな身軽さが欲しかったというところです。

で、動機がわりにからんでくると思うのですが、「おひとり様」をやるスタンスも、「暫定派」と「このままでいい派」に分かれると思うのです。
ネガティブ方向で「おひとり様事務所」を開業した人は、おそらく「おひとり様」自体を肯定的に捉えていないので、機会があれば、他の事務所に入りたいとか、一緒にやってくれる人がいればすぐにでも…と思っている人が多いでしょう。
ポジティブ方向の人は、まあ、濃淡はあれ、「このままでいい派」になる傾向が大きいのかな、と思います。特に「こころざし型」の人なんかは。
まあ、事務員くらいは雇いたいと考える人は多いでしょうが、誰かほかの弁護士と一緒にやるとなっても、基本的に同じ方向向いてくれる人じゃないと難しいでしょうし、弁護士同士の軋轢が生じるかもしれないというわずらわしさを考えると、「だったら、無理して大きくしなくてもいいわ」となりやすいと思います。

テラバヤシの場合は、結構濃ゆい「このままでいい派」に該当すると思います。
自分の場合、「マイペースでやりたい」という気持ちが強く(要はわがまま)、かつ「自分と相談者、依頼者の空間」というものにこだわりすぎているようで、事務所に常時「自分以外の他人」を入れることに対して、抵抗感があります。
多少の不便はあっても、それをカバーする手段があるのであれば、このままの形態で構わないと現時点では思っています。今後も変えることはありません、とまで言うつもりはありませんが。

業務の遂行方法も結構違うと思います。つまり、業務を円滑に遂行するために何か工夫しているか、ということです。
一番問題になるのは、電話の対応。
電話秘書サービスを常時使っている人、不在がちな日だけを選んで使っている人、全く使っていない人。
私は全く使っていないのですが、その代り、事務所にかかってきた電話を業務専用の携帯に転送するようにしています。
着信を見つけたら、「原則として」速やかに全て折り返すことにしています。そして、電話に出られなかったことについてまずお詫びをすることから始めます。
この対応で、困ったということは今のところありません。特に東京やその周辺の裁判所は、割にこういうことに慣れているような気がします(折り返しが遅々としてこないご高齢のおひとり様先生には手を焼いているようですが)。

個人的に電話秘書サービスは、あんまりお安いところだと、受けた電話の連絡内容を正確に伝えてもらえるのか、そして守秘義務の問題が不安ですし、士業に特化しているサービスになると結構いいお値段で、対費用効果という点で、二の足を踏む状況です。
もちろん、利用することを否定するつもりは全くありませんが。

自分の場合は、依頼者が50代以下の人が多いこともあり、日ごろの連絡方法はメールが中心です。
事件を受けるときに「ひとり事務所で、電話をとれないことも多いので、メールでの連絡が早いです」ということを予め伝えておきます。
働いている方や小さなお子さんをお持ちの方も多いので、よほど急ぎの用事じゃない限り、メールで事足ります(個人的には、電話で話すくらいなら、メールの方がいいと考えています。感情的になりやすいデリケートな事件でも、文字を打つ過程で冷静になることも少なくない印象です。メールでだめなら、もう会って話す)。

こうして考えると、「おひとり様事務所」も結構多様だし、(東京あたりでは)偏見も少なくなって以前よりは「かっこわるい」みたいなハードルも低くなっているとは思います。
が、ネガティブ派にしろ、ポジティブ派にしろ、ひとりでやるには、それ相応の覚悟は持っておいた方がいいな、という印象です。

まるっきり「ひとり」でやるということは、事務所のあれやこれやを全て、自分一人が背負うことを意味します。
他人様にグチグチ言われない気楽さがある反面、煩雑でもあるし、気持ちの上での負担も決して軽くはありません。
他に人がいる事務所でしているつらい思いに比べて、それが軽いか重いかということは一概には言えないけれど、質が違うプレッシャーは間違いなくあります。
事務員が対応してくれるであろうことも自分でしなければならないので、気を休める暇を見つけるのが難しいともいえます(忙しい人からすると、他人がいる事務所でも同じだわ、とお思いでしょうが、「気が休まらない」の質はやはり違うと思います。なかなかうまく言えませんが)。

まあ、こういうプレッシャーに耐えられない人は、「こころざし型」の人でも、こだわりを捨てて早めに他人を事務所に入れたり、事務所をたたんで他の事務所に移るということを考えればいいと思います。
逆に、ネガティブに「おひとり様事務所」を始めた人でも、こういうプレッシャーはあまり気にならず、案外居心地がいいということもあると思います。

最近は、(これも都市部中心かもしれませんが)事務所の再編も結構頻繁に気楽にやっている時代のようですし、出入りが多い=前の事務所で問題起こしたんじゃ?みたいな見られ方も減ってきているようです。
「今がこうだから将来もこうあらねばならぬ」ということにあまりこだわらずに、「事務所の在り方」を考えていけばいいんじゃないかなと思う今日この頃です。

ちなみにテラバヤシですが、おひとり様事務所独特の?気疲れは時折感じるものの、「事務所でゆっくりのんびり相談者の人とお話しする環境を(100%ではないにしろ)整えられた」ということに満足しており、当面このままでいこうかな、と思っています(電話秘書サービスくらいは、毎日ではないにしろ入れようか思案中)。

なお、さっき話した「気疲れ」については、自分の場合、案外、訴状とか調停申立書の提出準備という事務作業をのんびりやることによって、フッと解消されることもあったりするんですよね。
手際よくきれいにセットできた時なんて「ふふ」と何気に自己満足したりして。スカッとしたりするもんです。

しかし、自分で呼んでおいてなんなんですが「おひとり様事務所」ってネーミング、なんだか物悲しい感じですなあ。
何かいいネーミング、ないでしょうか。






Commented by ポイズン、ポイズン at 2015-08-10 00:57 x
ふと、「どくにんせいかんちょう」と打ったところ、載せられない変換になってしまいましたが

>訴状とか調停申立書の提出準備という事務作業をのんびりやることによって、フッと解消されることもあったりするんですよね。
>手際よくきれいにセットできた時なんて「ふふ」と何気に自己満足したりして。スカッとしたりするもんです。

いいお話です。一般性があるような気がします。よいお盆を。
Commented by つよそうなネーミング at 2015-08-12 15:18 x
『メドゥーサ法律事務所』。

魔力があって強そうで、しかしいつか翼の靴の王子様が迎えにきてくれそうな。「クラーク先生を石にしたのは、もしかしておまえですか」的な。
イメージとしては興福寺アシュラ像のメドゥサ版ですね。
Commented by シンプルに at 2015-08-18 22:27 x
「おばちゃん法律事務所」でいいんじゃないでしょうか。
Commented by 折衷説 at 2015-08-18 22:34 x
あいだをとって「メドゥーサおばちゃん事務所」。
もっといい案はないのかな?
Commented by GHQスピリット at 2015-08-18 22:47 x
マッカーサーが座右の銘としていた「青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。」(サミエル・ウルマン)にちなみ、たとえば
『46才青春事務所』というのはどうだろう。
Commented by もうすこしで at 2015-08-18 23:37 x
事務所名『半世紀の孤独』。

もしもメドゥーサ的なネーミングを採用する場合、事務所の証明は間接照明か蝋燭の灯りで、カラーコンタクトレンズの青、透かしのある妖しい黒のドレスに身をつつみ、時々、口から火を吹くなどすると効果抜群だと思う。また、部屋にはいくつか石像を置いて、少しずつその数を増やしていくべきだね。やはり志位先生は石化すべきなんじゃないかな。

思うに、年齢をふまえたネーミングについても、火を吹く場合も、青春について語らうときも、お酒は大切な要素になるけど、
ただ、似た名前のお酒があった気もする。もしかすると商標権等に課題あったりするのかな。あとは先生にきいてみようか。
Commented by 四字熟語だといい感じ? at 2015-08-19 09:24 x
「弁護士法人 孤高」「弁護士法人 ひと利」
最近の法律事務所のネーミングの流行として、「○○法律事務所」から「法律事務所 ××」があるのかなぁと思いまして…。「弁護士法人 おひとりさま」(お菓子の名前で『おふたりで』っていうのがあった気がするな…)「弁護士法人 諸行無常」「唯我独尊法律事務所」………四字熟語だといけるような気がする。「法律事務所 侘び寂び」と風流路線でいくか。
Commented by いけるような気がする at 2015-08-22 00:32 x
年齢詐称
Commented by 名前も at 2015-08-22 00:34 x
松田聖子
Commented by 結果的に at 2015-08-22 00:36 x
錯誤無効
by terarinterarin | 2015-08-09 16:50 | Comments(10)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi