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解決するとは、なんぞや。

師走最初の土曜日、皆様いかがお過ごしでしょうか。
テラバヤシは、お昼の仕事が1つキャンセルになり、ブログでも更新するかと思い立ったところです。

ともえ法律事務所というかテラバヤシは、弁護士になって以来、一貫して主に個人の依頼者の事件を受けてまいりました。
そんな中で、最近特に思うのが、解決するとは、これ如何にということです。

企業が依頼者のケースや個人に依頼者でも過払い請求が依頼内容だったりする場合、お金の支払いを受ける、建物の引渡しを受けるということが、そのまま解決につながることが多かろうと思います。
しかし、個人対個人の場合は、必ずしもそうならないことの方が多い。
請求したお金を返してもらっても、訴訟で相手に完勝しても、その後に忸怩たる思いが残ることが多い。
そういう場合、紛争の処理自体はそれで終了なんだけれど、果たしてその人にとって事件が解決したと言えるのかというと、決してそうではないと言わざるをえないわけで。

つまるところ、解決というのは、その人自身が「解決した」と思える状態に至ることなんだろうな、と現時点でのテラバヤシの結論はここにあります。

ただ、「解決したと思えること」というのも分解してみると種々様々あるわけで。
例えば、「思い通りのお金をゲットできたので大満足」という場合、「自分の思い通りには必ずしもならなかったけれど、代わりにお金をもらえたからまあいいか」という場合、「結局負けてしまったけれど、やれるだけやったからもういいや」という場合。どれも、その人にとっては、「解決した」ことになるのだろう、と思います。

あるとき、職場のパワハラでお悩みの方の相談を受けた際、その人は、こういう問題がある場合には、必ず法的手段をとらなければならないんだと思い込んでいたということがありました。
どうしてそう思い込んだのかはわかりませんでしたが、お話をしていて、気持ちを切り替えることで解決を図りたいと思っているのかなとなんとなく感じて、「法的な手段というのは、あなたがそれを採りたいという場合に使えますよというだけの話であって、例えば、違う観点から物事を捉えたら全然気にならなくなった、相手をかわせるようになった、というのであれば、別に無理に法的な手段に出ることはないと思いますよ」ということを思い切って伝えたことがありました。
そうしたら、その方は、すごくスッキリした顔をして帰って行かれました。
その後どうなったのかはわかりませんが。

解決するということが、こういう極めて主観的な問題であるとすれば、テラバヤシのように個人の依頼者の事件を中心に据えて業務を行っている弁護士というのは、相談にみえた方が、本当はこの件に関してどういう形になることを望んでいるのかということを、的確に汲み取ることが必要になるのだろうなと思います。
相談にいらっしゃる方の中には、時として、自分がどうしたいのか迷宮にはまり込んでしまってわからなくなっているケースもあります。
そういう場合には、まずは自分がどうしたいのか考えてください、とはっきり伝えることが必要でしょうし、見当が多少でもつく場合には、その答え探しを一緒にすることも時として必要でしょうし。

こういう問題だったら、これこれこういう請求ができますよ、相手にお金がないからやめた方がいいねえ、くらいのことを言うだけでは、おそらく真の法律相談とはいえないんだろうなと。

以前別な弁護士に相談したんだけど、ちゃんと話を聞いてもらえなかったという話も、実は割りによく聞くのですが、案外、こういう相談者が心の芯で望んでいるところに弁護士の言葉が届いていないことがこういう不満を生んでいるのかなと、なんとなく考えます。

もちろん弁護士は法律家ですので、どんな要望を出されようと、法的にできるかできないかを判断しなくてはなりません。ですから、その人の要望に対して代替手段としての法的措置を提案せざるをえない場合も結構あります。
そういうときに、その代替手段をとることで納得を得られるように気持ちを持っていくようにするのも、ひとつ、依頼者に満足してもらうための技術なんだろうなあ。。。
そして、依頼者にとって真の解決を導くための引き出しが多ければ多いほど、いいんだろうなあ。。。

うーん、こう考えると、なんだかどんどん落ち込んで夜も眠れなくなりそうなので、この辺で終わることにします。
さて、夕方からの仕事に向かいましょうか。
Commented by 青空 at 2015-12-05 16:00 x
先生のおっしゃることは、難しいですね(経営として)。いろいろな弁護士の方のサイトやコメントを見たりしていると「法律事務所は人生相談するところではない」とはっきり言い切る先生もおり、それはそれで確かに間違いではないのだと思います。
>職場のパワハラでお悩みの方の相談を受けた際
私ではないと思いますが(弁護士会の電話相談だったので)、「だーかーらー、何したいの?社長個人を訴えるの?それとも会社を訴えるの?それともカリショブンするの?そこんとこはっきりしてから電話してもらわないと困るんだけど!」と弁護士の先生に言われたことがあります(ある意味ショック療法ではありました(笑)今だから言えますが)。
まぁ私も悪かったのですが、きっと、こういうパワハラで相談してくる方は
>自分がどうしたいのか迷宮にはまり込んでしまってわからなくなっているケース
よりも、自分が悪いからパワハラされてしまったのだという事実を否定してもらいたいのでは(DVに似ていますが、その人自身を潰して良い権利などどこにも誰にもないのだという)……とちょっと思いました。ただそうなると本当に法律相談というよりは人生相談になってしまうので。
とりとめのない話になってすみません。お仕事頑張ってください。
Commented by terarinterarin at 2015-12-10 17:11
> 青空さん
コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。

自分は人生相談をしているつもりはありません。実際、人生相談にはなっていないと思います。法的に何ができるかできないかという話は当然しますし、それをするかどうかはあなたの選択だということは、迷われている方には必ず伝えます。リーガルサービスにあたって必要な範囲で内的なお話を聞くにとどめているつもりです。
「弁護士の仕事は人生相談じゃない」という言葉は至極もっともで、一見このように割り切った発言をしている弁護士でも、個人からの依頼が絶えない人というのは、依頼者相談者の内面にきちんと届く「法律相談」を提供しているのだと思います。
弁護士の実質的なスタンスというのは、うわべの言葉だけでは測れないものと思います。
by terarinterarin | 2015-12-05 15:14 | Comments(2)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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