インハウスロイヤーに対する支援策について考える。

裁判所が動かないこの時期。
久しぶりにのんびりした時間を過ごしている同業者の皆様も多いと思います。
たまっていた起案をこの隙に!!!ということになって、結局忙しいという方も少なくないでしょうが。

東京や大阪を初めとする大都市圏では、数年前から「インハウスロイヤー」すなわち企業内弁護士と呼ばれる人が増えていることと思います(激増、と言っていいのか?)。
司法修習終了後、一般企業に就職することを選んだ人の中には、弁護士登録をする人としない人の両方がいます。
登録するかしないかについては、必ずしも自分の意思で決められないことも少なくないと思いますが、弁護士登録をするとなると、弁護士登録をしない場合と異なり、相応の負担を負うことになってしまいます。

例えば、会費の負担。少なくとも月数万円に及びます。
そして、会務の負担。
さらには、新人となると、東京弁護士会の場合、必ず1件は国選の刑事事件を受任しなければならないというルールがあります。

テラバヤシは、新規登録者向けの刑事弁護ゼミの講師を毎年担当させられて、もとい、担当しています。
一班に十数名の新規登録弁護士がいて、ゼミの後も、担当する刑事事件について相談を受ければ助言しています。
班の中には、ここ数年、毎年必ずインハウスロイヤーの人がいます。
そういう人たちから、よく相談を受けるのが、電話問題とFAX問題です。

依頼者本人や家族からの連絡、警察署からの接見希望の連絡などを会社の電話で受けるわけにはいかない、しかし、自分の携帯の番号を教えるのは躊躇する、どうすればいいか?
法テラスから送ってくるFAX、会社のFAXで受けてしまうと、自分がすぐに取れなかった場合にほかの社員が見てしまう、何かいい方法はないか?

相談を受けたときには、電話については、仕事用の携帯電話をひとつ持った方がいいというアドバイスをしています。
別に通話だけできればいいのですから、飛び切り安い通話だけのプランのものでかまわないわけで。
FAXについては、インターネットFAXとハンディスキャンの購入あるいはスマホにスキャンアプリを入れることを提案しています。

しかし、提案はするものの、個人的に最善な策と思っているわけではありません。

まず、経済的な負担が発生するということが挙げられます。
格安の携帯プランとはいえ、月2000円くらいはかかる。
インターネットFAXも、テラバヤシが契約しているのは毎月送受信1500枚までで1500円。
ハンディスキャンも価格は1万円くらいするでしょう。
さらに、法テラスや裁判所は、基本的に携帯電話には連絡をくれません(休日を除く)。
法テラスは、国選事件の指名通知をインターネットFAXの番号には流してくれないという噂もあります(真偽のほどを直接法テラスに確認したことはないのですが)。
つまり、軽くはない経済的な負担を負ったうえ、100パーセント問題が解消されるわけではないのです。
インハウスを続けるのであれば、1件やった後は、国選はやらない、という人も少なくないでしょうし。

委員会活動も、基本的には会社の業務時間帯にかかる時間に行われるため、出席することが難しいことも少なくないのではないでしょうか。

もちろん、「インハウスロイヤー」という存在が全くなかった時代?に、国選や会務の運営方法が決められたわけですから、こういう問題が出てくるのは当たり前の話。

しかし、旧来の「弁護士」以外の形で弁護士資格を保持して働く人が単位会によっては一定数いて、かつ、今後もある程度増えていくことが予測されるのであれば、そろそろ「インハウスロイヤー向け」の支援や対策を、きちんと形にしないといけないのではないかなあと思うのですが、どうなんでしょうか。
会則の変更をしなければならないなど、かなり大掛かりな事態になると思うので、反対派が一定数いるとなかなか進まないとは思います。が、これ、手を打たないと「旧来型の弁護士でない限り、弁護士として認めない」というメッセージを、「旧来型でない」弁護士に送ることにもなりかねず、なんというか、(今でもそう感じているインハウスロイヤーは一定数いるようですが)業界内の差別問題を招く・助長することとなり、「自由と正義」を標榜する(一応ね)弁護士の世界としては、いやーな将来が待っているような気がしてならないのです。

例えば、東京弁護士会のケースでは、インハウスロイヤーとして稼働することになった新規登録弁護士については、国選1件受任ルールを撤廃し、将来、一般の事務所に登録することになった時に新規登録者と一緒に受講してもらうという代替策があると思います。
それでは、他の新規登録弁護士に対して不公平だというのであれば、刑事弁護関係の研修をeラーニングが何かで1つ2つ受講することによって代替するという方法もありうるでしょう。
どうしても、国選を新規登録時に受任するルールを変えられないということであれば、裁判所からの連絡を弁護士会で受けてあげて、それをメールなり携帯なりに連絡するような態勢を整えるとか、インターネットFAX解禁にするとか、柔軟に連絡が取れる方法を会が主導して進めていく必要があるんじゃないかと。

本来であれば、インハウスロイヤーの皆々様から「こういうことで困ってます」というまとまった声が会の方に届くのが一番良いのだと思うのですが、なかなか会に顔を出せないという状況では、インハウス同士が友人関係になる機会にもあまり恵まれず、したがって、まとまって意見を出す機会も設けにくい、声なき声が増幅していくという悪循環に陥っているようにも思えますし。

もっと企業側が弁護士の活動に理解を示すべきだ、なんて言っちゃう人もきっといるんだろうなあ。
でも、その理屈は傲慢だと思うし、われらの業界だって、イソ弁を自分の小間使いくらいにしか思ってなくて、会務も国選もやらせたがらないボス弁が少なくないですよね。人のこと、言えないよね。

というわけで、来年の新規登録者の刑事弁護研修の際には、今年と同じ相談を聞かないで済むようになっていればいいなと願うのでした。




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Commented by 68期インハウス at 2016-04-03 23:40 x
インハウスにご関心を持っていただき、ありがとうございます。電話問題とFAX問題、まさに私も悩んでいました。

個人的には、新人の国選受任義務や会務負担もある方がありがたいです。私は国選や会務も可能な限り精力的に取り組みたいのですが、これらの活動が弁護士の「義務」であるおかげで、堂々と会社の業務時間中に行うことが出来ます。

ところで、
『法テラスや裁判所は、基本的に携帯電話には連絡をくれません』
これは、具体的にどういった意味でしょうか?私は国選を受任する際には、国選用の名刺を作り、当該名刺には会社の電話番号を書かずに個人の携帯電話の番号だけ書き、関係者には全てその電話番号に連絡頂けるよう伝えるつもりだったのですが・・・。
携帯電話の番号に連絡をくれ、と言っても、応じず固定電話の番号を教えるよう求められるのでしょうか。それとも特に断りなく弁護士会に登録している電話番号などに連絡が来るのでしょうか。
Commented by terarinterarin at 2016-04-04 00:18
> 68期インハウスさん
コメントをありがとうございます。

個人的には、新人の国選受任義務や会務負担もある方がありがたいです。私は国選や会務も可能な限り精力的に取り組みたいのですが、これらの活動が弁護士の「義務」であるおかげで、堂々と会社の業務時間中に行うことが出来ます。

とてもいい会社ですね。
確かに、インハウスを何人も入れている会社であれば理解があって、68期インハウスさんのように活動できるんでしょうな(そういう会社が増えるといいなあ)。
しかし、私がお会いしたインハウスの方の中には、このような理解がなくすべて業務時間外にこなさなければならないとおっしゃっている方も少なくありませんでした。

さて、ご質問の件ですが、私もボッチ事務所故、例えば調停申立時などに念のため携帯電話の番号を記載して伝えているのですが、絶対にまずは事務所に電話がかかってくるのです(事務所にかかってきた電話も転送しているのであまり支障はないのですが)。
携帯にかけてくれるのって、保釈や準抗告の件で裁判所から連絡が来る時くらいですかねえ(むしろこの時は、申立書に携帯の番号書いとけ、とか言われます、裁判所から)。
しかし、いわゆる平時の連絡では、携帯にかけてきてもらえる経験がありません。

守秘義務の問題があるので、事情をきちんと説明すれば裁判所もそのように対応してくれるのかもしれませんが、「弁護士たるもの固定電話を持っていて当たり前」という刷り込みがかなり強いんではないか、と思われます。
Commented by 68期インハウス at 2016-04-04 19:22 x
先輩の弁護士数名からは、国選(等個人受任用)の名刺に個人の携帯電話・IP電話の番号を書き、裁判所等にはその番号にかけてもらうようにしてもらっていた、と聞いていたため、常に携帯電話等にしか電話はかかってこないと思っていましたが、そのような可能性もあるのですね。
留意して事前に対策をしたいと思います。
ご回答を頂き、ありがとうございました。
Commented by 68期インハウス at 2016-08-26 08:25 x
お久しぶりです。
先日国選弁護を受任したのですが、インハウスであり全て携帯電話に連絡してほしい旨を伝えましたところ、法テラス、裁判所、検察庁の全てで携帯電話へ連絡を頂けました。少しずつ私のような立場の方が増えているからかもしれませんね。
Commented by terarinterarin at 2016-08-26 08:52
いいお話ですね。次回の新規登録者研修の際に、披露させてもらいます。情報提供ありがとうございます!
by terarinterarin | 2016-04-03 18:17 | Comments(5)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。ウェブサイト https://attorneyterabayashi.simdif.com  「弁護士テラバヤシ」でツイッターもやっています。


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