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別居期間と離婚の問題

川崎麻世さんが奥様のカイヤさんに離婚訴訟を起こしていたことが判明して、まあまあのニュースになっています。
なんでも別居期間は18年間に及んでいるとか。
ネットニュースの論調は、「今更ですか」というものが大半のようです。
これまでも、双方の不倫など、すったもんだが多い夫婦だったせいでしょうか。

一方、先日お亡くなりになった樹木希林さんは、夫の内田裕也さんと40年以上の間別居していたそうです。
一度、相当前に内田裕也さんが樹木希林さんを相手取って離婚訴訟を起こしたことがあったようですが、離婚は認められず。
その後は、内田裕也さんの愛人問題が何回か持ち上がっても、内田裕也さんが事件を起こしても、離婚の話題が出ることはなく、樹木希林さんが亡くなるまで、ある意味添い遂げる形になったのです。

最近、離婚をめぐる司法の世界では、(婚姻期間との相関関係はあれ)おおよそ3年ほどの別居があれば離婚が認められるようになってきたといってよいのではないかと思います。
10年、7年、5年と、実務の運用は、長い時間をかけて、婚姻破綻を認定しうる別居期間を短くしてきました。

これだけを見ると、川崎・カイヤ夫妻も、樹木・内田夫妻も、余裕で婚姻破綻が認められる別居期間のハードルを越えているといえます。

ですが、あくまで感覚的な問題ではあれ、川崎・カイヤ夫妻のほうは、婚姻破綻しているという評価に異論を唱える人は非常に少ないであろうと思われるのに対し、樹木・内田夫妻のほうは、婚姻破綻していたという評価は非常にしにくいと言わざるを得ないように思われます。
樹木・内田夫妻のほうが、別居期間は圧倒的に長く、また内田さんの破天荒な夫ぶりは、川崎さんの夫ぶり、カイヤさんの妻ぶりを凌駕しているように見えるにもかかわらずです。

それはおそらく(あくまでマスコミが作り上げたイメージといえばそれまでですが)、川崎・カイヤ夫妻の場合には、夫婦として心が通っていない雰囲気がにじみ出ているのに対し、樹木・内田夫妻の場合、夫婦がうまくやっていくためのスタイルとして別居を選択せざるを得なかったのであって、(一時内田さんが離婚しようと思ったことはあったとしても)、夫婦としてそれなりに心が通っていた様子が見受けられるからなのでしょう。

こう考えていくと、離婚の実務において、不貞やDVなどの他の離婚原因がないケース、あるいはこれらの証拠が希薄なケースで、別居期間の長さを婚姻破綻の大きな大きな柱とみることは、ひょっとすると正しくないのかもしれないという結論に行き着いてしまいます。

もちろん、離婚などという当事者の主観の塊のような事件においても、判決は証拠に基づいて行わなければならないわけで、そうすると別居期間というのは非常にわかりやすい客観的なメルクマールなわけですから、裁判実務がこれによりかかってしまうのは致し方のないところだろうとは思うのです。

ですが、夫のほうがもう40年も別居していますという主張をしてきた際に、いやいや、別居している最中でも、夫婦として日常的にこのようなかかわりを長年していましたよという証拠がきちんと残っていたのであれば、それはやはり婚姻破綻とは言えないわけです。
別居期間の長さの前に離婚したくない当事者がひれ伏してしまうケースの中には、もしかすると、離婚を主張される割に近いタイミングに至るまで、居は別にしていても夫婦としてのかかわりはちゃんとあった、ただ証拠がないだけということが、案外多いのではないかと思うのです。

改めて、過去に自分が相談を受けたり、担当した事件を振り返ってみても、そう感じます。

婚姻破綻しているかどうかという判断は非常に難しいと言わざるを得ません。
離婚の相談に来た当事者に対して、別居期間が長いから云々、短いから云々というような紋切り型のお話は、実は結構しにくいなあと感じる、二組の夫婦の姿なのでした。


by terarinterarin | 2018-10-14 22:39 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


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