ここしばらくの間、私立医大の入試問題が世間の話題となっております。
はじめは、昭和大の女子受験生不当取り扱い問題。
そして現在は、東京医科大の現役・一浪優遇問題。
どちらも「理由のない差別」として、非難の的になっています。
憲法上、性別を理由とする差別は明文で禁止されており、これは私人間にも間接的にではあれ効力があるとされています。
なので、共学の大学が、(医学部だろうが何だろうが)性別を理由に得点操作を行い、女子学生を不利に取り扱っていたというのは由々しき差別問題であり、もうなんとしたって許せないのであります。
昭和大のニュースを聞いたとき、脱力するほど情けなくなりました。
ですが、東京医大の得点操作の話を聞いたとき、私は、何かデジャビュな感覚を覚えたのでありました。
どこかであったぞ、こういうの。
そう、旧司法試験で一時期行われていた、いわゆる「丙案」というものです。
簡単に言えば、司法試験の論文合格者のうち200人を、受験三回以内の受験生から優先的に合格させるという制度です。
司法試験の合格者の高齢化、受験年数の長期化を回避するための苦肉の策として?国が導入した制度です。
導入当時、「不公平な制度だ」などという批判は確かにありました。
が、大きなウェーブにはならずに終わりました。
(受験4年目以降の)多くの受験生は、一抹の不合理感を抱えつつも、丙案を受け入れ、淡々と受験をしていたのでありました(私もその一人なのでありました)。
ぎりぎりで落ちた人なんかは、国賠したりすることもできたんでしょうけど、そんなことに労力かけるくらいなら、勉強して来年受かったほうが早い(いや、これがなかなか受かれなかったんだけどね)、単純に時間がもったいない、そんな感覚の人が多かったのではないかと思います。
なので、一瞬、東京医大の「現役・一浪優遇制度」も、制度としてそれほど不合理なのか?と思ったりしました。
私立大学というのは、そのコンセプトに合わせて、「どういう人物を合格者として選別するか」ということについては、裁量を持っているわけで、そのコンセプトが合理的であり、かつそのコンセプトと合格者の選別方法がマッチしているのであれば、違法不当という非難はできないはずですので。
しかし、東京医大の場合、現役と一浪に試験で加点して入学させやすくした理由というのが「現役一浪のほうが入学後に伸びるから」という、どういうデータに基づいているのかさっぱりわからない、まるっきり感覚的なものでしかありませんでした。
これじゃ、合理的とは言い難い。
さらに、選別方法を秘匿していたというのが何よりアンフェアなわけです(丙案は当たり前ですが公表されてました)。
うちの大学は、医師不足の地域で元気に働ける体力の余った医師を輩出することを目指しています。
なので、若いピチピチの受験生から優先して選びます。
つきましては、現役と一浪には論文試験でこれだけの加点をします。
例えば、これくらいのことをきちんとオープンにしていたのであれば、非難ばかりではなく「まあ、さもありなん」という賛成意見もでたのではないでしょうか。
司法試験の丙案導入時代は、受験生が絶望して試験を受けなくなるということは特に起こらなかったと思います。学力が不足していると感じている受験生が受験を控えるということはあったようですが(むしろ現在のロースクール時代のほうが、経済的な面での絶望感が広がっているといえるでしょう)。
しかし、東京医大の件も昭和医大の件も含めて医学部入試の不当差別問題は、医師を目指す人の無力感を誘う、あるいは拡大する危険が高いな、と思います。
ただですら医師不足の日本なのに、これではますます医師になる人がいなくなってしまう。
そんな危惧すら感じたりするのでした。
追伸
平成30年11月1日付で、事務所を移籍することになりました。
移籍後もブログは続けていきますので、今後もお読みいただけると幸いです。
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