拘置所の中。

ゴーンさんの一件で、未決拘留者が過ごす拘置所の中の生活に注目が集まっております。
特に冷暖房がないという話は世間の皆様の驚愕を呼んだようですが、拘置所のあっと驚く生活はそれだけではありません。
今回は、テラバヤシが今までの弁護士生活から知るに及んだ拘置所の中のお話についてお伝えしたいと思います。

1 服装の制限
スウェットなどのウエストを絞る紐は外さないと差し入れできません。
パーカーやタートルネック、ハイネックの服も差し入れできません。
靴下はスニーカーソックス限定。足首が隠れるソックスは差し入れできません。
女性の下着に関しては、レースなどが付いたものは、確か差し入れ禁止だったはず。
Tバックのパンティも差し入れできなかったと記憶しています。
ほつれがあるような服も差し入れできません(一度、差し入れしようとしたスラックスの裾のまつり部分が落ちてしまったいたことがあり、急ぎだったので自分でお裁縫して差し入れしたことがあります)。

服装の制限は、大量な洗濯物を裁かなければならないという施設の都合と、自殺防止の観点からなされていると思われます。
拘置所の中には精神的に追い詰められている人、不安定な人がたくさんいるので、手っ取り早い自殺方法である「絞首」ができないようにするため、ひも状のもの、ひも状にできるものの差し入れが禁止されるわけです。
ですが、これでは、暖房がない施設で、冬場に暖をとれる服装をすることがかなり困難になります。
ツイッターにも書きましたが、私が担当した被告人の中には、あまりの寒さで足の指がひどいしもやけで紫色になってしまった人がいました。

自殺防止のために服装制限するなら、冷暖房何とかしてくれと切に思います。

2 食べ物などについて。
タオルや歯ブラシなどの日用品、雑誌や新聞のほか、パンやお菓子、コーヒーなどは拘置所内の売店で買うことができます。外の人がここから買って差し入れすることも可能です(東京拘置所の場合は、拘置所前にある池田屋という差し入れ専門のお店で買って差し入れすることもできます)。
ただ、買った食べ物などは、自身のみで消費しなければならず、同房の人とかに分けてあげることはできません(とはいえ、暴力団のお偉いさんなんかは買ったものを同房の人にばらまいているという話は幾度となく聞いたことがあります)。
東京拘置所ではチョコパイ、名古屋拘置所ではしるこサンドが人気商品と聞いたことがあります…

お金あれば好きなもの食べれるんじゃないか!!と思う人も結構いるかと思いますが、裏を返せばお金がないと食べられないわけです。
拘置所内の貧富の差は、かなり目を見張るものがあると思われます。

また、飲み物に関しては、確か1日に1回か2回お茶が湯呑1杯分支給されると聞いております。
熱い夏場にこれじゃ足りない…
水分不足で便秘などにもなりやすいでしょうし…

3 医療体制について

体調不良の人については医師の診察も受けられる体制にはなっていますが、「診察願」を出してから、最低でも1週間から2週間は待たねばなりません。
刑務所もそうですが、施設内には准看護師の資格を持った職員が常駐しており、市販の風邪薬や睡眠導入剤などは与えられるようです。
ですが、それ以上の医療についてまともな対応を受けることは非常に困難です(ちなみに刑事施設で処方される薬はジェネリック医薬品です)。
外部からの薬の差し入れもできません。
糖尿病などの継続的な治療が必要な人は、結果として放置される事態となります。
実は、刑事施設からの法律相談や弁護士会の人権擁護委員会への人権救済申し立ての中で非常に多いのが、医療の問題です。

(拘置所の話ではありませんが)ある知的障害の受刑者は、出所時に健康状態があまりにも悪くて入院しなければならなくなり、予定していた就労ができなくなってしまったという話も聞いたことがありました。
拘置所で未決勾留中でも、例えば糖尿病の投薬を受けられないがために、どんどんやせ細っていく人がいて、会うたびにこちらが不安になることも少なくありません。

拘置所の中では、テレビもラジオもなくもちろんインターネットもできず、新聞や雑誌が読めるくらいで情報も遮断されています。
面会も1日3人一組までと制限されている中、食事も服装も医療も制限を受けなければならない状況です。

拘置所に入るようなことをして人は悪い人たちなんだから、これくらいのことは当たり前だろうという人も中にはいるでしょう(実際、私の知人の医者で、悪い奴らなんだからまともな医療なんか受けられなくて当然だとのたまった人がいました。その人とは一生話をしないと決めました)。

しかし、未決勾留の人は、罪人と決まった人たちではありません。
よしんば悪いことをした人なのだとしても、受けるべき制裁は裁判で決まった「懲役」「禁固」「罰金」などに限られるはずです。
健康な体は更生のためにも欠かせません。
不健康な状態で釈放されると就労ができなくなります。その結果、犯罪に手を染めることにもなってしまうのです。

とにかく、拘置所はないものづくし、拷問のような我慢と不便を強いられる場所といっても過言ではありません。

それでも「別にいいんじゃないの」という人には、一度体験入所してみることをお勧めしたいと思うのであります。




by terarinterarin | 2019-01-20 22:03 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。ウェブサイト https://attorneyterabayashi.simdif.com  「弁護士テラバヤシ」でツイッターもやっています。


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