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強姦天国、冤罪天国。(平成31年4月19日追記あり)

3月、性犯罪について無罪判決が続き、話題になりました。

1つ目は3月12日の福岡地裁久留米支部判決。サークルの飲み会で泥酔させられた女性に姦淫した男性が準強姦罪に問われたもので、判決では、女性が抵抗できない状況であったのを認めつつ、女性が姦淫を許容していると誤信する状況だったと判断して無罪となりました(検察側控訴)。

2つ目は3月19日の静岡地裁浜松支部判決。強制性交等致傷罪に外国人男性が問われたものですが、被告人が、自身の暴行が反抗を著しく困難にする程度のものだと認識していたと認めるには合理的な疑いが残ると判断して無罪を言い渡しました(確定。なお、裁判員裁判)。

3つ目は3月26日の名古屋地裁岡崎支部判決。当時19歳の長女に対する父親(以前から性的虐待をしていた)による2回の姦淫について準強制性交等罪に問われたもので、裁判所は、長女が抵抗する意思や意欲を奪われていた状態だったことは認めたものの、抗拒不能の状態にまで至っていたと断定するには合理的な疑いが残るとして無罪を言い渡しました(確定したかどうかの情報はまだなし)。

4つ目は3月28日の静岡地裁判決。12歳の長女に対する強姦等について父親が起訴されたものですが、約2年間に渡り週3回の頻度で姦淫が強要されていたという主張について、長女の証言内容の変遷や、狭い家の7人暮らしで誰も気づかなかったのは不自然・不合理という理由により、強姦は無罪となりました(児童ポルノ動画所持については有罪。現時点で未確定)。

わずか約2週間の間に、性犯罪について立て続けに無罪判決が4件下されるのは極めて珍しいことです。

日頃、性犯罪も含めて刑事事件をそれなりに担当している身としては、1つ目については裁判官によってかなり判断が分かれるところだろうと思われ、控訴審で判断が覆る可能性が相当程度あると踏んでいます。
2つ目については、裁判員裁判でこのような判決が出たこと自体が非常に興味深く、3つ目については、そもそも準強制性交等罪による起訴が不適切だったのではないかと考えています。
4つ目については、捜査機関が初期の段階で、どのような状況で長女から供述を得ていたのかがはなはだ疑問であり、適切な事情聴取がなされていれば、強姦罪で起訴すること自体がなかったのではないかと思っています。

それはさておき、性暴力は許さないという風潮が強い昨今、4件の無罪判決は、世間から大きな非難を浴びることとなりました。
世間からの非難の中には、「実際に被害に遭っている女性の心理的状況に配慮がなされておらず不当だ」などと判決の事実認定のあり方に疑問を呈する、傾聴に値するものも含まれていました。
しかし、多くは「性犯罪で無罪なんてありえない」、「これじゃ性犯罪者はやりたい放題」などという感情的なものが多く、性犯罪で無罪判決を出すこと自体に対して怒号を浴びせるものでした。今日なんて、性犯罪に対する無罪判決を非難するデモが行われているようです。
弁護士の中にも、日本を「強姦天国」と揶揄する人物が表れたり(その弁護士は、それなりの考えをもってこの言葉を使ったようですが、言葉が独り歩きしていることは否めません)、政治家(共産党)の中にも、内容を吟味することなく一連の判決の非難をSNS上で繰り返す人物がいます。

刑事司法には「無罪の推定」という絶対不可欠の原則があります。
被告人が有罪であることは検察官が立証する責任を負っています。
そして、被告人が罪を犯したことについて合理的な疑いが残る場合には、無罪としなければならないのです。
一般の人にとってみれば、「疑わしきは罰せず」という原則だと説明したほうが分かりやすいかもしれません。
とにかく、どんな罪名であろうと、犯罪を犯したとされる人を裁く時には、この原則が適用されることになるわけです。

一連の性犯罪無罪判決を感情的に非難する人には、リベラル層が多いように見受けられます(これは私だけの意見ではなく、SNS上で同様の感想を述べる方が何人もいます)。先ほども挙げましたが、共産党所属の政治家の方もそうですし、著名人のなかでは、津田大介さんも無罪判決自体を非難していると受け取れるツイートをしていました。
超保守的な現政権が戦前の家族観に回帰することが望ましいといえそうな姿勢を見せていることとの対局に、女性の権利保護という概念があることからすると、「女性の権利保護」の一環として「性暴力は許さない」という考えはリベラルな思想と親和性が高いといえるでしょう。
そして、その「性暴力を許さない」と強く思っている人々が、今回の一連の性犯罪無罪判決に対して「許せない!!」といきり立ったように思われます。

リベラル派というのは、人権保護を重視する思想の持ち主のはずであり、したがって、通常は「冤罪を防ごう」などと叫んでいるはずなわけです。
冤罪を主張する再審事件について無罪判決が出たりすると、肯定的なコメントを出す。
それがリベラル派のはずなのです。

が、こと性犯罪ということになると、どうやら思考が全く逆転してしまう人たちが、中には含まれているようです。
「性犯罪で無罪なんて許せない」という思想はつまるところ、「性犯罪については無罪推定の原則を適用しなくていい」、「疑わしきは罰せよ」ということを意味することになるからです。

つまり、「性犯罪をやったと疑われるような人」なんて人に非ず。刑事司法の大原則を適用して権利を保障する必要なんてないんだという考え方なのです。
嫌疑をかけられた時点でそれなりのことしてるんでしょ。
女の子にテキーラ一気飲みさせるなんてそれ自体が許せない。
児童ポルノ動画持ってるなんて気持ち悪い。
だからこんなやつは疑われて罰せられてもいい。
そういう考え方です。

この「特定範疇に属する人」に対しては不当な取り扱いをしても問題ないという考え方、何かに似ています。
レイシズムです。
日本におけるレイシズムは、主に在日コリアンの方を標的にしており、その徹底的な排除を謳っています。
「性犯罪の無罪判決は許さない」派の人たちは、「性犯罪を犯した嫌疑をかけられた人」を標的にして、徹底的な糾弾を謳っているのです。
在日コリアンは在日コリアンという属性だけで日本のレイシストの標的にされており、良識ある人々、特にリベラル派の人々から見れば、「理由のない排除」として許しがたいと考えていることと思われます。
しかし、「性犯罪の無罪判決は許さない」派の人たちは、これと極めて似たようなことをしているわけです。
「嫌疑をかけられた人」はあくまで「嫌疑をかけられた人」に過ぎません。
排除される理由はありません。
例えば、児童ポルノ動画持っている人が全て性犯罪者なわけではありません。
にもかかわらず、理屈をこねて排除する。
レイシストと同じです。

性暴力被害を起こさないようにすることは大切です。
性暴力被害が起きたら、そこから被害者を救済することももちろん大切です。
ですが、そこだけを見てしまうと、それによる犠牲者が出てしまうことを忘れてはいけません。
1つの価値だけを偏重すれば、他の価値が損なわれることになるのです。

強姦天国と騒ぎ立てることは、日本を冤罪天国にすることです。
決して大袈裟な話ではありません。

性暴力を許さないことと、冤罪を防ぐことは両立する概念です。
両方の重要な価値の元で、では性被害者を救済するには何をすればいいのか、を考えていくことが必要です。

*追記:平成31年4月19日*

4月11日のデモ(スタンディング)等について、ツイッター上でレイシズム、ヘイトスピーチと同じだと投稿したところ、多数の批判が寄せられました。
デモ主催者は、当初「無罪判決を許さない」というスローガンをツイッターのプロフィールページで掲げており、賛同者が用意したプラカードにもその旨が記載されていたり、また参加者と思しき人が「性犯罪無罪撤廃デモにこれから行ってきます」というような書きも身をしているのも見られました(その後、「不当判決は許さない」に変更)。
ただ、昨日、賛同者の方(実際に参加はされていないようですが)とツイッターした際、「無罪判決の撤廃を求めるデモではなかったと思う」と記載されており、他にも「無罪撤廃なんて言っていない」とおっしゃる方が数名おられましたので、その旨は付記させていただきます(とはいえ、では、どういうデモだったのかという問いかけに対しては明確なお返事はいただいておらず、デモ主催者も賛同者以外に対する説明義務はないとして説明を放棄している状況ですので、わかりません)。

また、私自身、デモも含め、現在の性犯罪無罪判決批判の動きは、レイシズムの特徴も有しながら、他の現象(カルト宗教的現象や、安易なバッシング現象)の特徴も有していると考えるに至っております。
その意味で、今回の現象(特にデモ)について、レイシズムと同じだとお話した点については撤回をさせていただきます。

この現象をどうとらえるべきかは、刑事事件を多数担当してきた私にとっては、弁護士としての根幹にかかわる重大な問題ですので、今後も検討を進めていきたいと思います。
また、無罪判決一般の糾弾、無罪判決を書いた裁判官個人の糾弾、人格否定にまでつながっている現在の状況については、憂慮を憶えます。

今後も警鐘を鳴らし続けたいと思います。





Commented by レイプ天国、日本 at 2019-04-26 14:56
ほとんどは、裁判官が強姦自体を認めているにもかかわらず、無罪になっている。冤罪を減らしたければ、明白な強姦を無罪にするんじゃなく、人質司法の改善(長期勾留)、取り調べ中の弁護士立会いを認める等の処置が必要でしょう。

私は外国人なので、海外の判例とも比較してみるけど、日本はひどすぎる。特に、1,2,3番目が無罪になることは、海外では想像すらできない。100パーセンと強姦で、事実関係を裁判官がすべて認めている。ただ、無罪を言い渡しただけ。判決文をみると、冤罪はありえないでしょう。暴行、酒などの理由で女性が抵抗できなかったと認めてるから。それに初対面。3番目は、当然海外では、強姦罪です。なぜあなたは強姦罪じゃないと思うか。日本の過去の判例をみてもこれは強姦罪だ。
Commented by 分かりやすさ大事 at 2019-06-13 19:51
包皮さんの言うことはちょっと意味がよく分からない。

「韓国イケメンはレイプマンでないが、レイプマン非難者はレイシスト」といったハイブリットな主張は冤罪から助けてくれるかもしれないよ

逆にどういうサポートが好ましいとが思ってるか知りたいくらいです。
Commented by terarinterarin at 2019-06-14 11:26
冤罪被害者も被害者です。
その理屈を理解しようとしないう方は偏狭で暴力的です。
Commented by 分かりやすさ大事 at 2019-06-20 12:40
とりあえず「包皮は暴力的でない」ってオレは信じてるよ。
Commented by a at 2019-09-25 03:26
冤罪被害者が救われた素晴らしい判決が相次いだことです。
Commented by 分かりやすさ大事 at 2019-09-29 15:16
ちょ、コメント削除でオレが若干悪者の様相になってませんか?
どこいったのほうひ。
by terarinterarin | 2019-04-10 16:52 | Comments(6)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi