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NHK「これは経費で落ちません」に見た、女性の結婚後の働く意識。

7月から昨日9月27日まで、NHKの金曜夜に、10回シリーズで「これは経費で落ちません」というドラマをやっていました。

私はこのドラマが好きで、ほぼ毎回見ていました。

舞台は、天天コーポレーションという石鹸会社。主人公は、森若菜名子という経理部のOLです(演じるのは多部未華子さん)。
仕事がよくできる堅物の経理部OL森若さんが、経理に上がってきた数字をもとに、会社内の様々なトラブルの解決に一役買っていく、というドラマでした。

この森若さんを好きになり、猛烈にアタックした末付き合うことになったのが営業部所属の山田太陽くん(演じるのはジャニーズWESTの重岡大毅さん)。
若干お調子者ですが、森若さんに対する気持ちが一途で、見ていて好ましいものでした。

先週の第9回、森若さんに危機が訪れました。
会社がアウトソーシング化の方針を打ち出し、経理部もその対象になったのです。
一方、太陽君は、上司に見込まれて香港に出向することになります。

そこで、太陽君は、自分の居場所がなくなるかもしれないと落ち込んだ森若さんに、こう言います。
「毎日ご飯を作って待っていてほしい」
「仕事がなくなっても、オレが食わせます。」
「結婚してください。」

森若さんは、この言葉に「え?」と言っただけで喜びませんでした。

そして昨日の最終回。
太陽君は、森若さんの自分に対する気持ちに疑問を持ちます。

そして、ある日、太陽君は、同僚のOLが、婚約者から太陽君と同じようなことを言われてけんかになったという話にみんなが花を咲かせているのを小耳にはさみました。
「サイテー」
「なんでご飯を作るのがこっちだって決まっているんだ」
「古すぎなんだよ」
数々の悪口を聞いて、太陽君は、自分の考え方の間違いに気づくのでした…

私は、第9回の太陽くんのプロポーズを見て憤慨していました。
森若さんは、仕事がよくできて、自分の仕事に誇りを持っている女性です。
その女性に対して、「仕事なんかなくなったって自分が食わせるから大丈夫」などというプロポーズは最悪です。
女性にとっての仕事の位置づけを全く理解していない。
女性にとって「結婚がゴール」「結婚が幸せ」なんて言えるわけでもないのに…

そして、このドラマ、まさか安易に森若さんを寿退社させやしないだろうな、価値観が合わないからと言って太陽君と別れさせたりしないだろうな、とやきもきしていました。

しかし、ドラマでは、登場する天天コーポレーションの女子社員たちが、私と同じ価値観を持っていました。ホッとしました。
堂々と、「そんなことを言う男は最悪だ」と男性社員たちがいる前で言ってのけているシーンがあったことを、とても喜ばしく思いました。

実際にはなかなかここまでサバサバとしたやり取りはできないかもしれません。
しかし、ドラマの中でだけでも、女性たちが、女性にとっての仕事の価値を理解しない男性に堂々とモノがいえるシーンを描ける世の中になったことは、喜ばしく思えるのです。

私は、離婚を中心とした家事事件を多くやっています。
離婚事件の中には、男性が自立して生きていこうとする妻を押さえつけ、意のままにならないと暴言を吐いたり暴力をふるうという事象がたくさんあります。
離婚後も、自分の意のままにならなかった元妻に対して嫌がらせを続ける男性が散見されます。

女性は男性のための生き物ではありません。
女性の居場所は、家庭の中だけとは限りません(もちろん、家庭の中にいたいという女性も大勢います。私はそういう女性も尊重したいと思っています)。

しかし、そういう声を上げようとすると力づくで押さえつけようとする男性は少なくないのです。
そして、そんな男性の横暴は、実は世の中に蔓延している「俺が食わせる」=あなたの幸せという男性のささやかな勘違いから始まっているのだと思います。

「これは経費で落ちません」の第9回、第10回は、善良な男性の勘違いが女性を不幸に陥れる危険を、サラッと、しかし、しっかりと描いていたと思います。

そういう意味で、とても優れたお仕事ドラマだったと思うのです。

私は、フェミニストではありません。

しかし、「結婚して家庭に入るのが女性の幸せ」と未だに思っている男性には、それが、独りよがりの勘違いであり、大切な彼女や妻を不幸にしている価値観であるということに、いい加減気付いてほしいと思います。

気付ける才能がある人は、そもそも、DVやモラハラなんてものは引き起こさないようにも思うのですが。



by terarinterarin | 2019-09-28 22:22 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi