霞が関にある弁護士会館の地下は、いわゆる食堂街。
かつて東京三会が別々に会館を持っていたときにそれぞれ入っていたらしいお料理屋さんが入り、つい最近まで5店が営業していました。
最近になって2店舗が続けて閉店し、ほぼ居抜きで1店舗が入居したのですが、新たに、先週の金曜日11月22日、メトロというレストランが突然閉店してしまいました。
メトロは洋食中心のお店で、名物は手こねハンバーグ。それ以外もビーフメンチカツやカレーライス、スパゲティなど、昭和の香り漂う洋食が、そこそこにリーズナブルかつ万人受けする美味しさで提供され、多くの弁護士や弁護士会館職員らに愛されていました。
私も閉店する10日ほど前に訪れて、ナポリタンを食べたところでした。
私がメトロ閉店を極めて残念に思う理由は、「日頃親しんだお店がなくなったから」というにとどまりません。
以前このブログでも触れたような気がしますが、私はメトロに助けられたことがあります。
あれは東日本大震災に見舞われた3月11日のことでした。
当時私は法テラス愛知法律事務所に勤務していました。
その日は日弁連の会議に出席するために弁護士会館に来ていました。
会議の最中に大地震に見舞われました。
夜、新幹線に乗って名古屋に帰る予定でしたが、新幹線は止まってしまい帰れない。
その日は、いろんな委員会が日弁連で行われていて、帰れなくなった人が大勢いました。
そこで、多くの弁護士が、弁護士会館で一夜を明かすことになりました。
ご飯は食べれないのだろうな、と心細くなっていたとき、大量のカツカレーが弁護士会館16階に持ち込まれました。
なんと、メトロが帰れなくなった弁護士や職員のために、ありったけのカツカレーを作って振る舞ってくれたのです。
何という心意気。
私は感謝して、そのカツカレーをいただきました。本当に嬉しく、美味しかった。
私は、愛知から東京に戻ってきたとき、メトロのことを自分なりに応援しようと心に決めました。
といっても、ちょくちょく訪れることくらいしかできなかったのですが・・・
昼頃に霞ヶ関にいるときには、メトロによく入っていました。
昨年、3週間ほどの裁判員裁判をやったときも、お昼は8割方メトロにお世話になりました。
相弁護人とビーフメンチカツやハンバーグを食べながら、裁判の話をしたことが思い出されます。
弁護士会の会合がメトロで行われることも年数回ありました。
メトロの会合は立食で、広すぎない店内で色んな方とお話をするにはちょうどよいスペースでした。
そういえば、愛知に赴任する前、当時のボスに「好きなものをおごってやる」と言われて、「メトロのハンバーグが好きです」と答えてごちそうしてもらったこともありました(奥ゆかしいワタシ)。
メトロは、予告もなく突然閉店してしまいました。
事情があってそうなったようですが、飲食店が閉店するときは、ある日突然ということも少なくないようです。
若い頃、私が馴染みにしていたパスタ屋さんやすすきののバーも、ほとんど予告なく閉店してしまいました。
それは、お店の方が馴染みの客に気を遣わせたくないという思いやりだとも聞いたことがあります。
もう割りと長いこと生きてきたので、「〇〇っていい店あったんだよね」というお料理屋さんや飲み屋さんはいくつかあります。
メトロもいつかそういうことになるお店になってしまいました。メトロは思い出の中の一店になってしまいました。
メトロがなくなって、本当に悲しい。
もうあのハンバーグもナポリタンも食べられないかと思うと、ああ、もっともっと行っておけばよかったと思います。
そして、ありがとう、メトロ。
お店がなくなっても、私はメトロを忘れません。
事あるごとに思い出しては、震災のあの日に、カツカレーを振る舞ってくれたことを、周囲の人に伝えていきたいと思います。
<追記>
東日本大震災のときには、日弁連の職員さんたちが手分けして周囲のコンビニに走り、カップ麺などの食料品を買い集めてきてくれました。そして、弁護士優先に分けてくれました。
メトロにお礼するとともに、あのときの職員の皆さんの対応にも、改めて感謝します。