約2か月ぶりの更新です。
私は、過去に4年間東京家庭裁判所の家事調停官をやっておりましたが、そのころから離婚やこれに関連する家事事件を受任することが多くなりました。
特に最近は、離婚後の子の「共同養育」を提唱する声が高まっていることや、親権者決定における母親優先ともいえる実情(個人的にはそうでもないと感じておりますが)への懐疑的な論調も手伝ってか、面会交流が注目を浴びるようになり、私も、面会交流の事件を受けることが多くなりました。
面会交流は、別居親と子の間の面会の機会のことであり、離婚前も離婚後も問題となりえます。
ですが、実感として、離婚後の方が面会交流の問題は深刻化するように思われます。
よくあるものは、協議や調停で面会交流の合意をしたにもかかわらず、それが実施されないというものです。
これに加えて散見されるのが、DV加害者(注:身体的なDVのみならず、精神的なDVを含みます。いわゆるモラハラというものですが、私は、語感が軽いモラハラという言葉があまり好きではないので、あえて精神的DVという言葉を使わせてもらいます)が、離婚後も面会交流を利用して、相手方に対して悪質なハラスメントを継続するケースです。
具体的には、面会交流の日時方法の協議の際に、子の都合や体調に何ら配慮せず、自分の提案をごり押ししようとし、思うとおりの回答をしないと、威圧・脅迫する(親権をもらう、○○をばらす、自宅・職場に押し掛けるなど)、同席の面会交流を強要する、同席させたうえで面会交流中に威圧・脅迫するといったものです。
子がまだほんの赤ちゃんで母親同席じゃないと会えないにもかかわらず、面会交流をごり押ししようとするケースもあります。
DV加害者が子の親権を持っている場合には、自分の言うとおりにしないと子に会わせないと脅すケースもあります。
面会交流をネタに相手方をコントロールしようとするDV加害者は、同居時には子の養育に対する関心が薄かったケースや、子に対しても怒鳴りつけたり、暴力をふるったりといった問題行動をしていたケースが多く見受けられます。
かなり控えめに言って、DV加害者たちは、離婚後も「面会交流」という都合のいい道具を見つけて、相手方を痛めつけ、支配しようとしているわけです。
こういうケースで面会交流の調停が実施されることも少なくありません。
しかし、調停委員や調査官の鈍感ぶりには、時にあきれ返ることもあります。
そもそも、調停委員や調査官(おそらくは裁判官も)は、離婚調停でのDVの主張に対しては、「公平に話を聞く」という建前の下、「話半分」の評価しかしないのが通常です。
その姿勢は、こういった離婚後の悪質DV加害者が相手方の面会交流のケースでも全く同じです。
こちらがいくら訴えても、馬耳東風、到底こちらが受け入れられない面会交流の条件を平気で口にしてくる始末です。
DV加害者というのは、えてして外面が良く「この人がDVするなんて信じられない!!」という場合が多いのが通常です。
しかし、こんなことは、普通に家事事件をやっている弁護士からすると、わかりきっていること。
なんで裁判所はこんなことに気が付かないのか。
騙されたままでいるのか。
情けなくなります。
いやいや、わかっているのかもしれないけれど、説得しやすい方を説得しようとする結果、「公平」を振りかざして、耳を疑うような解決案を示してくるのでしょうか。
「面会交流」は法的には別居親の権利として位置づけられています。
そして、実務的には、「別居親」と「子」の間に、虐待等の特段の問題がないのであれば、実施する方向で調整するように運用されています。
しかし、DV加害者が権利を振りかざして実施する面会交流で、子は安らぎを得られるのでしょうか。
それにより、DV被害者が離婚後もさらに疲弊していくことが子の福祉にかなうのでしょうか。
DV加害者が親権を持っている場合、その要求を大きく受け入れた条件下での面会によって、子はDV被害者だった別居親と真の交流を図ることができるのでしょうか。
結論は目に見えています。
私は、DV加害者がらみの面会交流事件では、裁判所から見れば「強硬だ」と思われる手段を採ることもあります。
しかしそれは、離婚後もなお続くDVをかわすために必要なことです。
DV被害を受けないようにするために、相手の言うことをきくことは、時に愚でしかありません。
離婚後も面会交流を盾にDVを仕掛けてくる相手に対しては、毅然と立ち向かう必要があるのです。
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