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乙武洋匡さんの面会交流調停をめぐる報道について

先日、乙武洋匡さんが離婚した元奥様との間のお子さんとの面会交流調停を起こしていたことについて、報道がなされました。



記事によれば、申立がなされた後、裁判所の調査官による調査が行われたものの、お子さん方が乙武さんに会いたくないという意思を表示し、乙武さんは申し立てを取り下げたとのことです。


別居中あるいは離婚した夫婦の間のお子さんについて、別居親が会いたいと望んでも、お子さんのほうが会いたくないという意思を表示することは少なくありません。
その場合、同居している親は、多くの場合「子どもが会いたくないというのであれば無理に会わせるわけにはいかない」と判断して、面会の求めを断ります。
そこであきらめてしまう別居親も少なくありませんが、一定数は、お子さんとの面会を求めて家庭裁判所に調停を起こします。
これがいわゆる「面会交流調停」と呼ばれるものです。

このようなケースで調停が行われる場合、「お子さんが会いたくないって言ってるそうですからねえ」という理由で簡単に調停が終わることはありません。
何らかの形で面会交流を実施することができないか、現時点で実施できないにしても将来的に実施する「目」を残しておくことはできないかという観点で、裁判所は様々な調整を試みます。
なぜなら、面会交流というのは別居親の権利であり、また、子どもの「会いたくない」という言葉は額面通りに受け取ることができないと一般的には考えられるからです。

裁判所の上記のような考え方はかなり強固なもので、例えば別居親がDV親であったとしても、また、子に対して虐待を行っていた親であったとしても、「本当に子どもは親を拒絶しているのか」という視点で考えようとします。

家庭裁判所の調査官の調査は、そのような観点から、両親のインタビュー、家庭訪問、子に対するインタビューなどが行われ、最終的に「調査報告書」という形にまとめられます。
この調査報告書は「会わせるべき」「会わせるべきではない」などと結論を明示していないことが多いですが、実際にはこれをもとに、「こういうスタイルでこうこうしてはどうだろう」などという提案が調査官からなされることも多く、これを機に最終的な調整がなされて調停成立という段取りになることも少なくありません。


面会交流調停は数多く経験していますが、お子さんが別居している親御さんに会いたくないと強く言っている例でも、あらゆる意味においてお子さんと別居親がノーコンタクトという事例は、私個人は経験したことがありません。


現時点で直接的な面会は実施しないにしても、将来的に子が会いたい、会ってみてもいいかなと思ったときに、会う段取りが取れるように何らかの道筋をつけておくことが多いと感じます。


それは両親と子ども3者の意思の間をとった解決とばかりもいえず、子が将来、別居親を完全に拒絶し、関係性を永続的に絶ってしまったことについての傷を負わないようにという配慮、もう少し言えば「親が恋しい」と子が感じるときのための念のための準備をとっておこうという考え方に基づくのではないかと私個人は思っています。


もちろん、私が担当してきた案件の中には、「この件でそこまで面会交流の将来的な実施にこだわる必要があるのだろうか」と当時思われたものもありました。
ですが、今そういう案件を思い返してみると、「あの時の調停の約束は今もまだ守られているだろうか」、「あの子は親に会っただろうか」と考えることもあります。


離れてしまった親子の関係をどうやって継続していくかということを調停の場で話し合うことは、遠い将来を見据えると意義深いものなのだろうと思います。


報道によれば、乙武さんの息子さんたちは乙武さんに対する拒絶感が強く、会いたくないという意思をはっきり表示していたとのことです。
調査官の調査が行われたようなので,このお子さんの「会いたくない」という意思についてどのような評価がされたのかが非常に興味深いところです。
ある程度年長のお子さんの意思表示なので、調査の場でもそれなりに言葉自体が尊重されてしかるべきとは感じるものの、一方で多感な年齢のお子さんの意思表示でもあり、言葉の裏には複雑な思いが隠されているのではないかという気がします。


乙武さんがどのような理由で調停を取り下げたのかは情報がなくわかりませんが、このまま取り下げずにいたとしたら、どのように調整されたのか興味深いところでもあります。


乙武さんの家庭での振る舞いについては芳しくない評価も少なくありませんが、調停の世界では、どんな親も親に変わりはないのです。
調停を起こしたということは、乙武さんも「親」として何らか子に関わりたいというお気持ちがあったことは間違いないでしょう。
そして、そういう気持ちは、一度家族というものを持ったことがある人であれば、誰しもが持ちうる感情ではないかと思うのです。


実務をやっていれば、案件によってさまざまなことを思い、考えます。
必ずしも一般論どおりに代理人としての活動をするわけではありません。

ですが、少なくとも今回の乙武さんの件について、外野が、調停を起こしたこと自体がそもそもおかしい、というような論調で記事を書くのは、ちょっと違うのではないかと思うのでありました。








Commented by 面会交流調停見物 at 2020-09-20 13:54 x
デリケートな問題を公然とネタにされ… (´·ω·`)
かわいそう。 (´;ω;`)ブワッ。。

しかし、オレよりモテてる様子が妬ましいので
ここは見て見ぬふりをしよう。。
(ノД`)(´艸`)。。

もし人に知れない苦労を抱えつつ、
5~6人の女性+おばちゃんプラス1に
虐められてる最中だったらゴメン。。

見て見ぬふりして通りすがること、お許しください。
 バイビー
≡(∩´∀`)スタコラサッサー
by terarinterarin | 2020-08-31 16:08 | Comments(1)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi