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2度目の破産について考える

当事務所は、債務整理案件も数多く手がけております。
私自身、自営の事務所をやっていた時は数えるほどしか債務整理をやっていませんでしたが、移籍後は、多くの債務整理案件を担当するようになりました。

法テラスにいたころは(今から10年近く前)債務整理はかなりやっていたので、久々に債務整理が日常の業務の中にある日々を送っております。

債務整理案件の大半は自己破産案件です。

自己破産の理由は多様ですが、ギャンブルや飲食、買い物などの浪費が原因で借金を作ってしまった人が一定数いる一方で、手にする所得が少なかったがためにクレジットやキャッシングの返済ができず、多重債務に陥る人も相当数います。

自己破産が2度目という人も相当数いらっしゃいます。実数を数えたわけではありませんが、私の印象では、当事務所に移籍してからの自己破産2度目という方の割合は、担当した自己破産事件のうち4分の1から3分の1くらいに上っているように思います。

10年から15年前に1度破産したという方が多いのです(注:東京地裁の自己破産申立書式では、7年前以内に自己破産したことがある方はその旨記載しなければなりませんが、7年より前の場合にはその旨記載する必要がありません)。
50代以上の方で目立つ印象です。

私が新人だったころ、あるいは法テラスのスタッフ弁護士をしていたころは、自己破産が2度目という方に出くわすのはまれなことでした。
実際に統計があるのかどうかはわかりませんが、少なくとも私の感覚では「2度目の自己破産を申し立てる」という方は、明らかに増えているのではないかと感じられます。

債務整理を行う事情が様々であるのと同じように、2度目の自己破産を申し立てるに至る事情も様々ではあります。
ですが、2度目の自己破産を申し立てるに至った人の中にも、やはり生活費が足りず2度目の破産に至ってしまったという方が少なくないのです。

このことは、日本の社会において、この十数年の間に貧富の差が広がったこと、貧困層が増えたことを表しているように思われます。
つまり、一度貧困に陥ってしまうと、そこから抜け出すことが難しい世の中になってしまったということなのではないでしょうか。

新人弁護士だったころ、私は、債務整理の研修で、講師を務めた弁護士から、「自己破産の申し立てにあたっては、弁護士が、その人が二度と貧困に陥らないようにケアしながら進めていく必要がある」と言われておりました。
申立書類の中にある家計表の作成や預金通帳のチェックを細かに行い、家計管理がしっかりできるようにする、家族のために借金を背負っている人の場合には、家族も打ち合わせに同席させて依頼者に借金のしわ寄せがいかないような家計管理を家族全体でするように指導する、そういったことが大切だと言われていたのです。

もちろんこの考えは間違いではないと思います。
実際、過去に破産事件をやっていたころ、このような打ち合わせを繰り返して、依頼者にお金の使い方がわかった、これで今後はお金に困ることもなくなると思う、などと言われたこともあります。
自己破産をきっかけに経済的な立ち直りを図ることができたということなのでしょう。

しかし、そもそもの収入が増えない、増えないどころか自己破産申立のころより減ってしまった、そんな状況が貧困層の中により一層蔓延するようになってしまったのでしょう。
単に家計管理をするだけでは、貧困からの立ち直りを図ることができないというケースが増えてしまったように思われます。


弁護士の仕事をしていると、扱っている事件の傾向・動向によって、社会の動きや社会問題を実感することも少なくありません。
例えば、最近では、不仲な夫婦、離婚当事者の間で子をめぐる紛争が増えました。男性が育児に参加し、子に対する愛着を表に出す機会が増えたのだなとつくづく感じます。

2度目の破産の件数の多さは、日本社会の貧困問題の深刻さを、私に感じさせるのでありました。



by terarinterarin | 2021-04-07 16:48 | 債務整理 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi