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東京と違う札幌の刑事事件の身体拘束に対する感覚

前回投稿からちょうど3か月経ちました。
大変ご無沙汰しております。

札幌弁護士会に登録替えした後、1年以上刑事事件の待機名簿に登録していませんでしたが、今年の2月に登録し、その後2件の刑事事件を担当しました。

まだたった2件ですが、東京と札幌の身体拘束に対する実務の違いに、若干戸惑って?おります。

守秘義務があるのであまり詳しくは書けませんが、1件目は、知的障害と発達障害がある幼い子どもに対する親による傷害事件でした。
配偶者や他の子供にも知的障害や発達障害があり、様々な意味で家庭生活が成り立っておらず、社会福祉法人や児童相談所が介入して、何とか生活をぎりぎり保てているような状況の中で起こった事件でした。

勾留を阻止する活動をすることもできませんでしたし、私の感覚では、延長満期まで勾留され、その後は略式になるか、あるいは支払い能力がないのであえて正式裁判請求されて、未決勾留日数の算入により罰金支払い済みとみなして判決後に釈放…という流れかなと考えておりました。

そうしたところ、延長後の勾留は7日間で、略式起訴後いったん釈放されたようでした。

この事件で、勾留が延長7日間しか認められないというのが私には新鮮でした。
事案は単純でしたが、被害者は知的障害と発達障害がある幼い子どもで、事情聴取にも特段の配慮が必要でしたし、母親からの事情聴取も難航を極めそうな感じでした。
なので、おいそれとは捜査が進まない…という理由で、東京なら間違いなく延長後10日間フルに勾留が認められそうな案件だったのです。

それを7日で終了させて、略式起訴していったんは釈放(労役場留置が待っているのはほぼ確実ですが)というのは、私にはなかなか驚きでした(なお、私としては不起訴でよいと思う案件だったので、その旨の意見書は提出しました)。

次に昨日来た案件は、泥酔した男性が飲み屋で起こした本当に軽微な暴行事件でした。
当番の出動要請があって接見して話を聞かされた時、勾留請求は却下される可能性が結構高いけれど、勾留請求まではいくだろうと思っていました。
そこで、勾留請求をしないように求める検察官宛の意見書と勾留請求の却下を求める裁判官宛の意見書を作成すべく(本丸は後者だと思っていました)、接見後、私はえっちらおっちら、仕事関係者のもとに行って身元引受書をもらいました。
そして、それを意見書に添付して、今日の朝イチで張り切って札幌地検に提出しに行ったのです。

そうしたら、本日の送検予定のものに該当がない、したがって意見書は受け取れないと、係の事務官から言われました。
私は驚いて警察署に電話し、捜査担当者に聞いたところ、送検せずに本日釈放すると言われたのでした。

私は二度びっくりでした。
確かに私の眼から見たら、「酔っぱらいのちょっとしたおイタ」程度で、こんなもの勾留して罰金まで行ったら正気の沙汰じゃないというものでした。

しかし、東京の身体拘束の実務の感覚では、警察が送検せずに身体釈放するなんてありえませんでした。
逮捕したらとりあえず送検、送検されたらとりあえず勾留請求、それがザ・東京の身体拘束実務でした。

なぜ、東京と札幌でこんなに違うのだ?と考えたのですが、ひとつには、人口の違い→刑事事件の数の違い、ヤバい人の人口の違いというのが挙げられるのかもしれません。
とりあえず、ヤバそうな人は許されるかぎりぶち込んどけという感覚が、何でもありの街東京にはあって、政令指定都市とはいえ、全然牧歌的で所詮地方の街に過ぎない札幌にはないということなのかも。

そしてもうひとつ、札幌の弁護士の皆さん方が、これまで一生懸命身体拘束を争ってきたことの成果として、今の状況があるのかもしれないなとも思うのです。

確かに東京には著名な刑事弁護人がたくさんいます。
一方、札幌は、会ぐるみで地道にコツコツと捜査機関とこれまで戦ってきたのでしょう。その結果、「むやみやたらと身体拘束できない」という感覚が、捜査機関にも根付いたし、裁判所の勾留実務にも表れているような気もしています(もちろん札幌にも刑事弁護の大御所は何人もいます)。

私は、「まあ札幌では新人だけど、ハードな東京でやってきたから」と自負していたところがありましたが、もうイチから学ぶつもりで、ひとつひとつの刑事事件に当たって行かねばならない気がしています。

来月も待機日があるので、その時にはもう少し札幌的な感覚で、刑事事件に対応したいと思うのでありました。

by terarinterarin | 2024-04-26 13:19 | 刑事事件 | Comments(0)

寺林智栄の弁護士としての日々や思いをつづります。


by terabayashi